幕間 人心操作の魔術具(4)
メイド視点の話です。短いので本日二話更新しています。
あの女を追い払い、私はアスコット様と屋敷の中に戻った。
口を閉じられてもごもご言っていたメイド長はそのまま自室に引きこもっている。
裏庭で魔術具を踏みつけた後、アスコット様は私を大切な宝物のように扱ってくれた。まるで魔法にかけられたような変化に、私は魔術具の効果を確信した。どうやらあの宝石を壊すことで効果が発揮されるものだったようだ。
アスコット様は私にメイドの仕事から離れるよう告げ、メイド長に私の世話をするように命じた。そして私の望み通り、あの忌々しいルトアシアを家に入れないように使用人たちに告げたのだ。
驚いたメイド長は大騒ぎしていたが、結果としてあの女はこの屋敷から去って行った。見たことのない男も一緒だったし、やはりアスコット様には相応しくないただの尻軽女だったのだ。
屋敷に戻った私はアスコット様に導かれるまま、彼の部屋に入った。これまではあの女が我が物顔でいたこの部屋に、今は私がいる。私はこみ上げる優越感に口元が上がるのを押さえられなかった。
「ようやく二人になれたね」
そう言ってアスコット様が私の肩を抱き寄せて来た。揺れる栗色の髪から甘い香りが漂う。うっとりと見上げていると、アスコット様が私に尋ねた。
「君の望み通り、追い出したけど? 他に望みはある?」
望み……。
そう言われて私はごくりと唾をのんだ。今までずっと空想の中でしか言ったたことのない言葉を、私は口にした。
「私を、私をあなたのものにしてください。アスコット様……」
私の言葉にアスコット様は一瞬目を見開き、すぐに優しい笑みを浮かべた。
「君って、思っていたよりもずいぶん積極的だね」
「もう、当たり前じゃない。私はずっとあなたのことを思っていたのよ」
私は少し恥ずかしくなって、ぶっきらぼうに答えた。だがそんな強がりなど、アスコット様にはお見通しだったらしい。優しく私の顎を掬い上げ、私と視線を絡ませた。
「そうなんだ。嬉しいよ」
「そうよ。だからあの女も、タチアナとかっていう婚約者も、全部忘れて私のものになってちょうだい」
そう口にした瞬間、ぴくっとアスコット様の手が揺れた。そして次の瞬間、私の身体は彼のベッドの上に投げ出された。彼が私の身体を強く押したのだ。
「……わかった。ただ、ちょっと優しくは出来ないかな」
私の足元にアスコット様の低い声が落ちる。私は高鳴る心臓の音がアスコット様に聞こえやしないかと心配になり、私はぎゅっと胸元を押さえた。
ぎしっとベッドがきしみ、アスコット様の気配が近づいてくる。
「さあ、目を閉じて……」
私の意識はそこで途切れた。




