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4-8 俺が知りたいことについて

短いので、本日二話更新しています。グレーヴの自分語り回です。

 ちゃんとした役者になりたいと思っていた。

 立派な結果を残せる役者になりたいと思っていた。

 俺に生きる場所を与えてくれた劇団に恩を返したいと思っていた。


 そのためには劇団に金を出してくれるレナータの存在が必要だと思っていた。

 利用できるものを利用して、何が悪いのか、と。


 でも彼女は言い切った。


『本当は自信があることでも、全部人のせいにしています。レナータ様に選ばれることをわかっていて、自分でそこに行きつくように道を作っています。その道しか無いと言わんばかりに』


 さらには俺が『嫌い』だと彼女は言ったのだ。


 俺だってそんな自分になんかなりたくなかった。でもそのことを考えると妙に頭の中が曇ってくるのだ。


(いつから俺はそんな人間になってしまったんだ……?)


 考えれば考える程、結局行きつくところは一つ――劇団トロピカを存続させる、それだけが目的になっていたのだ。


 彼女の深紅の瞳に見つめるとどこか身体の底が落ち着かなくなり、すぐに逸らしてしまいたくなっていた。全部見透かされるような怖さに襲われていた。

 でもその一方で彼女に触れてみたかった。今、俺を形づくっているものが全て溶け落ちれば良いのにと、身勝手にもそんなことを思ったりもした。


『それでも私はグレーヴ様を推します。グレーヴ様が舞台に立つことで、演じることで人を笑顔にする姿が好きだからです。ずっと応援いたします』

『とにかくあなたを一人の人間として推してまいりますから!』


 しかし彼女のその言葉を聞いて、なぜか目の前の曇りが晴れたような気分になった。


(俺は、役者でなくとも認めてもらえるのだろうか?)


 ――知りたい、聞いてみたい!

 そんな衝動が俺を突き動かした。

 年下の少女に頼るのが情けないのはわかっている。けれどそんな体裁など構っていられない。どこかわくわくするような気持ちも生まれつつあった。あの“黒猫”からの手紙を読んだ時と同じ気持ち――いやそれ以上だった。


 気づけば俺は走り去る彼女の背中を全速力で追いかけていた。止まっていた時間を巻き戻すかのように。

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