幕間 人心操作の魔術具(2)
短いので次話と合わせて二話同時に更新しています。
とうとう、とうとう手に入れた!
アスコット様が留守の間に忍び込んだ作業部屋。変な臭いが漂っていたけれど、アスコット様がこの空気を吸っているというのならずっと嗅ぎ続けていても良いと思った。
机の上にはたくさんの小瓶が並んでいたけれど、私は迷わずに一つ選び取った。
真珠のような輝きを放つ、とろりとした液体の入った小瓶。
アスコット様に声をかけると、いつもこの小瓶とにらめっこしていた。
だから私は思った。これが一番魔力を込めているものだと。
エプロンのポケットに入れてもうっすら光るそれを、見つからないよう胸の中に隠して私は部屋に大急ぎで戻った。
メイド長に言われた仕事があったが、それよりも大切な事。
ベッドの下から“人心操作の魔術具”を取り出す。
大きな宝石が入っているようなデザインのブローチ。
宝石の部分はくすんでただの石にしか見えない。密売人曰く、この宝石に魔力を込めると術が発動するらしい。
私は緊張ですっかり乾いてしまった唇を舐め、胸元からあの小瓶を取り出す。
「これを、かければ。もしかしたら……」
わずかな望みをかけ、小瓶の中の液体を一滴、おそるおそる宝石に垂らした。
ぽたり、と落ちた液体は宝石の上を流れず、不思議な事にみるみる吸い込まれていった。吸い込まれた瞬間、淡い光が宝石から放たれた。
「――やった! これでいいのね」
私は小瓶の液体を全て宝石に飲ませた。
宝石は海綿が水を吸い込むように液体を取り込み、淡かった光は輝きを増した。
「成功よ、成功したわ。これでアスコット様を……! あの女を!」
私はブローチを握りしめ、心からの願いを込めた。
「アスコット様、あの女を追い出して! そして私を一番に愛してちょうだい!」




