幕間 人心操作の魔術具(1)
頭が痛い、吐き気がする、目の前が真っ黒になる――。
昔から出入りしているらしいあの女、一体何者なのだろうか。
お茶の準備を頼まれ、部屋に行けば二人は見つめ合っていた。
嫉妬に気が狂いそうになる。
せっかくウィギンズ家のメイドになって、アスコット様のお側にいられるようになったのに。
それがあの女!
急に現れたと思ったら、ご主人様はあの女しか見なくなった。
メイド長に聞いてもはっきり答えてくれない。
ご主人様には婚約者がいたはずなのに、あの女は婚約者よりも愛されているように見える。
もしかして、と私は思った。
婚約者の方は偽りで、本命はあの女なのかもしれない、と。
ただどちらにせよ、私には邪魔者が増えただけだった。
夜、私は部屋に戻り、ベッドの下に隠したトランクを引っ張り出した。
今、巷でひっそりと話題になっている魔術具の盗難事件。
実は盗まれた魔術具の一つは私の手元にある。
密売人から手に入れたそれは“人心操作の術具”。
一見、何の変哲もない地味なブローチだ。しかしこれに魔力を流し、術が発動すれば持ち主の思い通りに人の心を操れるらしい。
ただ私は魔力を持たない。
だからアスコット様の魔力をお借りするつもりだ。上手くいけば魔術が発動し、アスコット様の心は私の物になる。
もし上手くいかなかったとしても、それほどまでに私がアスコット様を思っていることが伝わり、彼の心を動かせるかもしれない。
まずはアスコット様の魔力を手に入れる。
あの部屋に忍び込み、アスコット様が調合している薬剤を取ってこないと。きっと魔力が込められているはずだから、それを使ってみようと思っている。
まあ、もしそれで上手くいかなければ方法はまだある。
もともとご主人様がご結婚なさったら妻となった女を消そうと思っていたのだから、それがあの女になっただけの話だ。
この屋敷でご主人様を独り占めしている、ルトアシアとかいう女に……。




