死んだら教えて
灯りを用意し、好奇心の赴くまま、私は先に何が在るかも分からない階段を降りた。
暗闇で自分の足元すら見えず、自分が真直ぐ進んでいるかどうかさえ分からなかった。
どの位歩いたか、階段を暗中模索で歩き、実際の長さが分からず、何十段、何百段にさえ思えた。
実際は大した距離でもなかったかもしれない。
階段を降りきると、頑丈そうな鉄の扉が現れた。
その扉はまるで入る事を拒む様に私を威圧し、臆させた。
しかし、扉を開ける事を躊躇した私だったが、ここまで来た以上開けざる負えなく、扉に鍵は掛かっていなかった。
私は扉を開けてしまった――。
暗黒が広がった部屋だった。
灯りがあってもまるで何も見えない。それでも私は、部屋へ恐る恐る足を踏み入れてしまった。
部屋の広さも、何があるかも分らないにも拘らず。
一歩一歩慎重に進んでいると、足元に何かがぶつかり、灯りを近づけようやくそれが箱であることが分かった。
箱といっても、見慣れない西洋の箱の様なものだった。
私は、その箱を開けようとしゃがみ込み、箱に手をかけたその時だった。
突然、扉が独りでに閉まったのだ。
私は驚き、思わず灯りを落としてしまい、その瞬間全てを闇が包み込んだ。
どうにか扉へ辿り着き、直ぐに開けようとしたが、その扉は二度と開くことは無かった――私はその部屋に閉じ込められてしまったのだ。
灯りを失い、部屋の中は何も見えず、何も聞こえなかった――。
それでも私は必死に扉を開けようとしたが開かず、別の出口を探したが見つけられなかった。
唯叫び、闇雲に助けを求めるしかなかった。
何か無いか部屋中を探した――しかし、何も見つけられず、誰も助けに来なかった。
唯一部屋に有った箱も、開ける事が出来なかった。
私は唯々途方に暮れるしかなかった。
闇の中、どれ位時間が経っただろうか。
一週間か、一ヶ月か、それも分らず、薄れゆく意識の中、私は死を悟った――。
断末魔、私は不思議なものを見た。
それは俗にいう走馬灯だったのだろう。
しかし、その内容はまるで見覚えが無かった。
何故ならそれは、私のものではなかったのだから――。
「――慌てないで、問題はここからよ」
誰の走馬灯かは分からない――知らない人が私に、私を通して誰かに話しかけていた。
他人の走馬灯とはいえ妙に現実的で、まるで自分が体験してきたことの様だった。
『内容が思い出せない。忘れてしまったのか――確か名前が…、あき?…。名前が思い出せない。私の、私の見た走馬灯の持ち主の名前が…』
走馬灯の内容は覚えていない。忘れてしまったのか、まるで思い出せない。
薄ぼんやり女性が居た様な。それ位しか――。
――気が付くと私は、見覚えのある暗闇の中に居り、自分がまだ生きている事を知った。




