箱入り
死線をさまよった挙句、走馬灯まで見たというのに私は生きていた。
何故生きているのか、あのまま死ねたら楽になれたのに――。
そう思わざる負えなかったそんな時、私はある事に気付いた。
今まで感じる事の無かったそれは私の体を通り抜けて行った。
私はそれの出どころを必死で探した。
そして見つけることが出来た。微かな光を――。
今まで感じる事が出来なかった風の流れ、見つける事の出来なかった光。
死線を超え、私の体に何かが起こったのか、不思議なことにそれらを感じ、見つける事が出来た。
私は最後の力を振り絞り、這いつくばって風の流れる光を目指した。
そこには壁の切れ目に小さな隙間があり、眩しい程の光が漏れ、風が吹いていた。
それは正しく外へ続いているに違いなかった。
私は必死に掘った。
爪が割れ、血が流れようが掘り続けた。
無我夢中だったからか、痛みは感じなかった。いや、感じることが出来ない様になっていたのかもしれない。
必死だった。必死に、必死に掘り進め、ついに私は地上へ出る事が出来た――。
たどり着いた先は『六鳴館』隣の教会、その内部へ出た。
地下で繋がっていたのか、地下室から掘り進め、いつの間にか教会地下まで来てしまっていた。
久しく見ていなかった外の光は余りに眩しかった。
眩しく、神々しく。それはまるで女神の様な――。
その時、地上へ出て初めて見たものが、教会に飾られた硝子絵だった。
その美しさは私に、地下での出来事を忘れさせ、見惚れさせた。
暫く動けなかった私だったが、我に返るとある事に気が付いた。
無意識での仕業だろうか、地下室に在った箱を持って来ていたのだ。
それを見た途端、開けずにはいられない衝動が、私の体を動かした。
明るい所で改めて見たが、それは何の変哲もない箱だった。
何なら鍵すら無い唯の箱。
しかし、地下室では開ける事が出来なかった――しかし、それが今になって開き、私は躊躇なく箱を開けた。
開けてしまった。
箱を開けた瞬間、中から煙が溢れ出し、私を包み込んだ――。




