などなかった
私に至っては、万千の顔がいつもの様に自信に満ち溢れており、何の心配も無かった。
私が一緒に居ることが必要ないと思える程。
問題は夜音の方だ――。
万千の事が片付いたら、今度は夜音を救う為女性街へ行かなくてはいけない。
幸い、大郷司邸から女性街は近く、女性解放戦線に夜音の事を伝え、彼女を救い出しに行かなくては。
夜音の事もあるが、私以外の魔女の存在を知れば、きっと協力してくれるだろうし、もしかしたら『オズ』を探す手伝いもしてくれるかもしれない。
そんな期待も持てた。
――程なくして大郷司邸の近くまで来たとき、その異変に気付いた。
大郷司邸へ続く道が人でごった返していたのだ。
その大衆はどうやら近所の住人達で、クルマに気付くと道を開け、先へ進むよう促してきた。
大衆の好奇な目は私達に注がれ、それらの人々が唯の野次馬であることに直ぐに気が付いた。
ゆっくりと進むクルマから見えてきた大郷司邸には、野次馬達から一線を画し、これらの原因が分かった。
「これは一体――」
そこには大勢の女性たちが、大郷司邸を囲む様に集まっていたのだった――。
その中には私も見覚えのある人物や、私の学校の女学生、さらに大人の女性まで居り、そこに集まっていた人々は全て女性で、ざっと百人は居そうだった。
その異様な光景に私は驚いた。
しかし万千は、最初こそ驚いてはいたが、何かを悟ったのか今は落ち着いていた。
クルマは大郷司邸の前まで付くと、集まっていた女性達にクルマは囲まれ、皆一様に『お嬢』と呼び掛けてきた。
万千を『お嬢』と呼ぶということは、万千を慕っている証でもある。
ならば、ここに集まった女性達は、万千の為に集まったのだろうか。一体何の為に――。
万千は女性達の声に応える様にクルマから降り、彼女達は万千を囲み、私は降りようにも降りられない雰囲気だった。
車内には私と運転手の男性の二人きりになってしまい、私はどうすることも出来ず外を眺めていると、運転手の男性が口を開いた。
「――屋敷の前に集まっている女性方は、お嬢様から何らかの御恩を受けた方々でしょう。お嬢様の婚約を聞きつけ、きっと居ても立っても居られなくなり、お集りになられたのかもしれません」




