おとめごころ
「誰がそんな事――誰があんたのクルマになんか乗るか」
「何を意地を張って――乗りたいくせに」
「乗りたくない!」
「乗りたい!」
「乗らない!」
「乗りなさい!」
「乗らん!」
「乗れ!」
「キッーーー。誰が乗るか!」
――私は別にこうなる事を望んだ訳でも、何かを引き受けたわけでもない。しかしどうだろう、いつの間にか大郷司家のクルマに乗り、大郷司家へ向かっていた。
「――おとめ、家へ寄っていきなさい」
「折角の申し出だけど、結婚祝いを忘れてしまったわ――残念だけど遠慮させてもらうわ」
「特別に招待しようというのよ。それに、クルマにも乗せてあげた――だから付き合いなさい」
「婚約も決まり、色々《いろ》と忙しいでしょう?今日はお暇するわ――」
「――結婚はしないわ。その事を今からお父様へ伝えに行く」
「なら、尚更私は――」
「特別に…、特別に、わたくしの側に居させてあげますわ。そして、わたくしの手を握り、握り続けることを特別に許可しますわ。それに、それに――」
万千――。
「――私の手、潰すなよ」
私は彼女を、その見た目や性格からまるで――いや、誤魔化したくない。
私は偏見を持っていたしていた。それ以上言い様が無く、しかし当然の様に、無自覚に。
――環は一緒には来なった。
寂しそうな顔をしていたが、多分来られなかったのだろう。
万千の背中が付いて来るなといっており、それを環も感じ取ったのだろう。
「そもそも、何故環なの?だって彼女は女性解放戦線に通じているし。それではあちらの思うつぼじゃない?」
「そうよ…、それだわ!環さんが女性解放戦線と通じていた事を、お父様にお知らせすればきっと――」
幾ら万千でも、今回ばかりは父親には逆らえないらしい。
今まで、見合いや婚約を散々誤魔化してはきただろうが、今回ばかりは――。
しかし、女性解放戦線のおかげで、少しではあるが光明が見えた。
皮肉にも万千と結婚する為、女性解放へ協力してきた環のおかげで。




