祝・
「――あの万千が結婚ねぇ?これ程おめでたい事もないわ。おめでとう、万千」
「『おめでとう』ですって?――貴女は一体何をお聞きになっていましたの?わたくしがどのような想いでいるか…」
「どうせ貰い手なんていなかったのでしょう?丁度いいじゃない。それどころか、貴女に、環は勿体ない程よ」
「八乙女ツクス!貴女は何を言って――」
「言わせておけば――例えどの様な殿方が来ようと、望まない結婚がどれほどのものか、貴女には分からないのですわ!」
そう言って万千は、いつもの様に私に掴みかかって来た。
しかし、両手で掴んだ胸倉の、その手にはいつもの様な力は無く、怒りも感じなかった。
「――嫌ならやめればいい」
「だから、それが出来れば――」
「だったら、いつもの様に力尽くにやればいい。女性解放戦線だっている、それに『オズ』へ行けば――」
「――それでは意味が無いのです!そうやって暴力を振りかざしたり、誰かに頼ったり、在りもしない幻想に縋り、それで世は、わたくしは救われますの?」
「万千――」
「わたくしは力の限りを尽くしてきましたわ。その所為で人も多く傷つけました。しかしどうです、何かが変わりまして?女性の地位は向上せず、社会進出も進まない。一向に自由になれない――暴力では、わたくし一人の力では…」
万千が一体何と戦っていたのか、私には分からない。だけど、万千が何の為に戦っていたかは分かった――全く、噂通りの大馬鹿だよ。
「何というか、色々大変ね――でもまぁ、私には関係ないけど」
「貴女という人は、他人事の様に――まったく、これだからお暇なお人は」
「お生憎様。こう見えても私、忙しくてね。今から『女性街』へ向かうの」
「あら、そうでしたの――わたくしも、今から家の方へ戻りますの。クルマも待たせていますわ」
「方角が一緒ね。乗せなさいよ」
「ご冗談を――しかし、貴女の誠意によっては考えなくはないわ」
「まさか、頭を下げろというの?する訳無いでしょう――そんな事する位なら歩いた方が増しよ」
「あら、わたくしも鬼ではなくってよ。素直に乗せて欲しいと頼めば、乗せてあげてもよくってよ」




