女性初
「――勝手にわたくしの幸せを約束なさらないで下さいまし」
「万千!――」
環邸から出て来た万千は、着物にたすき掛け姿で、行儀見習いに来ている事が本当の事だったのだと分かった。
しかし、その姿は家事とういより、討ち入りの方が似合っている。
「そもそも、こうなってしまったのも、貴女方女性解放戦線の所為ですわ――確かにわたくし、この国の指導者には成りたいけれど、いかがわしい組織の三代目や代表になど成りたくはありませんし」
万千は『三代目雷鳥』の申し出を断ったのか――それでも、その事が大郷司家の耳に入り、婚約を早められたのだろう。
女性解放戦線だって万千を諦めてはいないだろうし…。
「わたくしは、わたくしの手で大学へ行き、女性初の政治家に成り、この国を治めたいの――貴女の様に魔女や魔法などと幻想に現を抜かさず、女性解放戦線の様に暴力で変化を求めたりはしない。その為には結婚なんてしていられない」
万千。私が魔女である事を、魔法の事を聞いたのか――。
それにしても驚いた、万千がそんな立派な事を考えていたなんて。
多少引っかかるが、その言葉にはまるで、虚勢や嘘偽りを感じなかった。
それがどれだけ困難で険しい道のりであっても、もしかしたら、万千なら叶えてしまうのではないだろうかとさえ思えた。
「素晴らしいわ――ならば私は、貴女の夢に全力で協力します」
環は、万千に豪く感激し、跪き手を合わせ見上げていた。
「………」
「大郷司さん?」
「結婚なんてしていられない――そう、思っていたのだけれど…、今回ばかりはそうも言っていられない状況になってしまったわ。お父様は、女性解放戦線に何やら遺恨が有る様で、うやむやに出来る雰囲気ではない。こうなった以上お父様には逆らえない」
「心配には及びませんわ。私が幾らでも貴女を支えます。結婚してからでもこの国を治められます」
何があったのか、万千らしくもない言葉だった。
彼女なら、デモクラシーがどうとか言って、親の縁談なんて断固拒否するはずなのに。
最初から戦う気もない――だからか、私は無性に腹が立った。




