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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯4 今までも、これからもおとめ
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怒号

 御家おいえため、父にみとめてもらう為。


 そう言っていれば自分を誤魔ごませると思った。思っていた。だから自分でも分っている。


 『私』という大義名分たいぎめいぶんたてに、見合いから逃げる算段さんだんを立てていたに過ぎない事を。


 もしつぎ縁談えんだんが来ようものなら、私は父を――。


「あれは何かしら?――あちらで何かやっていますわ」


 彼女がうかがっていたのは、近くの神社のなつまつりだった。


 地元じもとの祭りだが、がらの悪い殿方とのがたが多く私はあまり行ったことが無かった――。


 しかし、彼女が何やら興味きょうみを持ち、いや予感よかんがした。


「あれは地元の神事しんじおこなう夏祭りです――今日はまだ本祭ほんまつりではないはずなので、行っても何もありませんよ」


「――行ってみましょう。貴女きじょと居てもつまらないだけだわ」


 つまらなくとも、私は行きたくなかった。


 祭りがどうこうではなく、今の自分の格好かっこう大勢おおぜいの人に見せたくなかったからだ。


 しかし、彼女をいてかえわけにはいかず、そんな事をしたら、父に何と説明せつめいしたらいいか。


 出来る事なら破談はだんについては、彼女の口から説明してもらいたかった。


 ――祭りはまだ準備じゅんび最中さいちゅうだった。


 境内けいだいには屋台やたいが作られ、鳥居とりいの近くには土俵どひょうまであった。


 くわしくは知らないが、神事というのは相撲すもうを取る事なのだろうか。


 屋台も神事も準備はしているものの、人はまばらで助かった。これなら人目ひとめにつかず、彼女もあきらめがくだろう。


「今日は祭りの日ではないようですし、帰りましょう」


面白おもしろいものがりますわ。わたくし一度いちど、こちらに上がってみたかったの――」


 そういうと彼女は、脇目わきめらず、躊躇ちゅうちょもせず土俵に上がって行った。


 土でかためられた土俵の上で、悠然ゆうぜんと海をながめ、上がれた事に満足まんぞくしたのだろう、腕組うでぐみまでしている。


 土俵に女性が上がる事。それが何を意味するか――私も知っていたのならめたのだが、それこそあとの祭りだった。


馬鹿者ばかもの!何をしている、今直いますぐ土俵からりろ!そこは、お前のような女が上っていい場所ではない」


 怒鳴どな近付ちかづいて来たのは、神主かんぬしであろうはかまをはいた老男およしおだった。


 物凄ものすご剣幕けんまくに、私はただおどろき、何故なぜ怒鳴っているのか理解りかい出来できなかった。


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