見張って見合って
「私は――」
そんな国が在るのなら、魔法が本当なら、何もかも顧みず、全てを捨てて付いて行きたかった。
いや、いっその事何処にでも、何処でも良いから逃げ出したかったのかもしれない。その勇気さえ有れば――。
「私は、私の為に『オズ』を探す。その為に何でも協力する。結婚だってする。だから、私を助けて――」
それから数日が過ぎ、見合いの日がやって来た――見合いの場所は私の家。
大郷司万千、彼女は一人で来たわ。
お似合いのドレスで着飾り。
彼女の態度ときたら、見合いというより、環家を品定めしに来た様だった。
「良い御屋敷ですね、海も近いし――」
「……気に入ってもらえて良かった」
挨拶も程々に、『後は若い者同士で――』等と押し付ける様に、彼女と二人きりにされてしまい、そんな私は、特注の背広を着た男装姿だった。
長かった髪も項まで短く切り、油で固め――おかげで、赤くなった目は隠せなかった。
「もうおやめにしましょう、こんな茶番。わたくし、殿方としか結婚しないの。貴女にもその覚悟は無さそうですし――」
「!?待って下さい。それではご両親との――」
「親の決めた縁談なんて、わたくし幾らでも断るわ。わたくしのお相手は親が決める事じゃない、わたくしが決める事――貴女は違うの?そんな覚悟で泣くくらいなら、男のふりなどやめなさい」
「――私が好きでこのような事をしているとでも…」
「表へ出ましょう、海が見たいわ――」
それから私達は港に海を見に行ったわ――見合いの次はランデブーとは気が利いているわ。
正直私は、大郷司万千の申し出にほっとした。
そもそもこんな見合いが成立する訳がなく、相手側から断られる事を内心望んでいた。
しかし、この見合いが破談したからといって私自体何も変わらない。
また次の見合いが決まるだけの事。
唯、こんな事をさせられないのなら、その方がまだましなのだろう。私が私でいられるなら。
ハイネさんとの約束もあったが、この見合いが破談したら約束もなにも無いだろう。
しかし、『オズ』を見つけられるのなら、それに越したことはなかった。婚約が無くなった以上、家も私も救われていないのだから。
「本当によろしいの?ご両親が何と言うか――」
「わたくしより、ご自身の心配をなさったら。事情は存じ上げませんが、家運を一身に背負っているのでしょう。そこまでなさって――」
「この様な形でなければ――私も旗本の娘、殿方の元へは嫁ぐ覚悟は出来ています」
「とても素晴らしい考えをお持ちね。尊敬しますわ」
思ってもない事を――私は何を、見えを張っているのか。
破談と分かった途端気が緩んだのかしら。
思ってもない事を…。唯単に私は、彼女が気に食わないだけなのだ。
自由で、強い彼女を。




