不良
夜音「夜音、嵐山夜音。あんたは?――どうせ暇だろ?私に付き合え」
この出会いが私の人生を大きく変えた。
出会ったあの日、私は彼女にある場所へ連れて行かれた。
自由文化学園高等女学校へ――。
朴「ここは一体?」
夜音「女学校さ、私も通っている――そして、今日から貴女も通うことになる」
朴「何を言って?そんな事出来る訳無いでしょう。私みたいな…。それに私は、もうすぐ祖国に強制送還される。やっと解放される」
夜音「何も変わらんさ、徴用も植民地も。同じ国民間でさえ差別は絶えない」
朴「だからと言って逆らえないわ」
夜音「私に任せておけ――」
朴「………」
夜音「貧富の差は更なる偏見を生み、無知は差別を助長するだけだ――学問を身に着けろ。どんな金持ちも、どんな差別主義者も、学があるやつを無下には出来ないだろう」
朴「そんな事、本当に…」
夜音「私に全て任せろ。貴女の事も、母親の事も、父親の事も」
夜音が何をしたのかは解らないが、私は強制送還されず、自由文化学園へ通う事と成った。母も職に有り付け、住む場所も出来た。
一番驚いたのは、私達への嫌がらせが日に日に無くなっていった事だった。
彼女は一体何をしたのか、私には見当も付かなかった。
しかし、私はそれらを直ぐには受け入れられなかった。
勿論、夜音には感謝したが、それで今までの事が無かった事にはならず、今尚祖国や、この国のどこかでは私の様な人間がいる、そう思うと私の心は荒むばかりだった。
案の定、私は学校にも通わず不良に成っていた――。
朴「仕返しとばかりに悪事ばかりを繰り返していた――厚意を無下にしていた。今まで、他人から優しくされた事が無かったんだ、信じられる訳がない」
おとめ「――そんな貴女が、どうやって立ち直ったの?」
私はある日、隣町のある噂を耳にした――。
怪物。
身の丈百寸はあろう巨体に、怪力を振るい、暴れ回っている者の噂を。
その荒くれ者は、如何なる敵にも屈せず、自分の腕っ節一つで全てを屈服させ捩じ伏せた。
それは怪物たる所以であった。
しかし、私を駆り立てたのは怪物が戦う理由にあった――。
女学生達の純情を守る為。
気に食わなかった。人を救った気にでもなっているのかと。
しかもその怪物が女学生と聞いたからには黙ってはいられなかった。
そんな奴は私が――。
その怪物は、人々から尊敬と畏怖を込め、『お嬢』と呼ばれていた。




