根
朴「そんな場所、有る訳無いのに――」
ゲーテ「朴、もうよせ――」
帰国が近づき、投げられる石を上体だけで避けられる様になった頃、夜音と出会った――。
いつもの様に投げられた石を避けながら私は、ふと気付いてしまった。
どうせこの国ともおさらば出来るのなら、この投げつけられた石を投げ返してもいいのではないのかと――。
拾い上げた小石は固く、こんなものを投げつけていたのかと怒りが込み上げ、強く握りしめた。
そして私は、そのまま振り被り、投げ返そうとしたその時だった。
彼女が現れたのは――。
嵐山夜音が――。
夜音「それを投げ返したら、貴女も奴らと同じになる――醜く、哀れで無力な存在に」
朴『ハッ!――』
ゴトッ――。
彼女の声のおかげで、私は寸前のところで踏み止まる事が出来た。
夜音「あんなガキ共、ほっとけ」
セーラー服――。
彼女を見るなり、彼らは逃げ出して行った。
朴「貴女、言葉、話せるの?」
夜音「貴女がこの国の言葉を少しは話せる様に、私も嫌でも覚えてしまった。ま、困る事もない」
朴「………」
夜音「あいつ等を恨むか?――奴等にしてみれば貴女が怖いだけなんだ…」
朴「………」
夜音「この国を恨むか?――それとも貴女の国を恨むか?」
朴「………」
夜音「貴女だって分っている筈――」
朴「貴女に…、貴女に何が分かる――」
夜音「分からないさ。分からないから偏見や、差別が生まれる。しかし、そんな事は直ぐに無くなる――クルマや、船舶に飛行機。日々進歩している乗り物。それらは国境を無くし、毎日馬鹿みたいに外国語の勉強もしている。きっと言葉の壁も直ぐに無くなる筈。だから嫌いにならないで欲しい、私達を、この国を」
朴「それまで待てと言うの?そんなに待てないわ――そこまで言うのなら、貴女が…、貴女が変えて見せなさいよ」
夜音「今この国は発展途上だ――デモクラシーは動き出し、否が応でも変わらざる負えない」
朴「――貴女、名前は?」




