新しい月
『よろしいでしょう。貴女は二階へ――但し、お連れ様はここにお残りを』
「私は大丈夫よ、夜音。お母さんに会って来て――忘れないでね、魔法の呪文」
「あぁ――使わずに済みそうだけどな」
その場に居た女性達は、階段まで道を開け、夜音は一人二階へ上がって行った。
一人残された私だが、万千達がここに居ない以上、どうすることも出来なかった。
逃げようにも周りを囲まれ、帰れない。
二階へ行った夜音が、万千達を見つけてくれることを願い、あわよくば、連れて来てくれれば…。
『さて、八乙女ツクスさん。貴女の事は、話に聞いています。貴女の存在が、我々の未来を大きく左右すると――しかし、我々は、貴女の本質を知らない。ですから、証明して欲しいのです。貴女が我々の『新しい月』に成れるかどうかを』
『新しい月』――?
その瞬間、会場中がざわついた。
言葉の意味は分からなかったが、私に対する期待と、私が魔女である事を証明しろということだろうか――。
それにしても、ハイネさんだけではなく、この組織そのものが、私に、『オズ』に興味があるということなのか。だとしたら差詰め、ハイネさんは女性解放戦線を利用して『オズ』へ行くつもりなのだろう。
その為に私を――。
「――私にどうしろと?」
『デモクラシーの世らしく、民主的に、この国の法律で決めましょう――貴女を見極め判断します』
「――それは、つまり?」
『裁判で決めましょう――貴女は、自分が魔女であることを証明なさい』
魔女であることを証明しろとは、皮肉にも私が今、一番出来そうもない事を――。
「証明出来たら、私も『オズ』へ連れていってくれる?――それに、万千や環にも会わせて」
『それは貴女が導く、と聞いていましたが…。まぁ良いでしょう――ご友人については、ご自由に』
「約束よ――」
『お聞きの通り、彼女を裁判に掛けます。よって、今日の舞踏会はお開きにし、後日に改めましょう――貴女も今日はお帰りなさい。そして、また明日いらっしゃい。今度は正面からね』
――結局、私は何も出来ず帰路についた。
唯、万千は『三代目』襲名を延期され、夜音もお母さんに会えただろうし、『女性街』にも来れ、『オズ』についてもほんの少しだけ近づけた。
約束も取り付けただけでも上出来だろう。
しかし、環については何も解らず仕舞いな上、魔法が使えなくなり、私の無力さを痛感した事も事実だった。




