平塚
仮面舞踏会――。
そこに居た全員が仮面を着けていたのだ。これでは誰が誰だか解らない。
私達はその場に立ち尽くしてしまった。
そこには大勢の女性が居り、そこに居た殆どの人間が、開かれた扉を、私達を見ていた。
ドレスで着飾り、仮面で顔を隠し、覗き見る様な目で…。
案の定、私達は直ぐに見つかってしまった――。
中では既に舞踏会が始まっており、今まさに私の目の前で行われていた。
「夜音ちゃんよ――」
「三代目が来てくれたわ――」
ざわつく会場からは、夜音を歓迎する声が上がった。
しかしそれらは、夜音を歓迎するものだけではなかった――わざとらしく、疎ましさを言葉にするものもあり、その視線を浴びせられた。
少なからず私は歓迎されていないらしい。
私は必死に万千や環を探した。
仮面で顔が解らなくとも、背格好で分かると思ったからだ。
特に万千に至っては、その図体は女性の比ではなかった。
しかし、この場には居ないのか、見つけられない。一階の部屋はここだけだろうし、万千や環は二階に居るのか――。
「これじゃ、魔法を使う意味が無い――いや、いっその事、全員の仮面を吹き飛ばすか…」
『皆さん、静粛に!――貴女方も、取り敢えず中へ』
何処からか聞こえた声は、よく響いた。
誰の声かは分からないが、この場に居る人物の声ではないだろう。鶴の一声。この場に居た全員が黙り、静まりかえった。
私達は中に入る他なく、渋々入った。
扉は閉ざされ、周りを囲まれてしまい逃げ場が無い。それでも夜音は物怖じせず、堂々《どう》としていた。
「『二代目』に会いたい。会わせてくれ――ついでにこいつも、友人に会わせてやってほしい」
夜音――。
『彼女を招待した覚えはありませんし、『二代目』には、お会することは出来ません――ですが、貴女が『平塚夜音』であるのなら、或いは…』
『平塚』――?『嵐山』ではないのか?
「……わかった――『平塚夜重』に会わせてくれ」
『平塚』は母親の姓なのか?
夜音と母親の間には何かがあるのだろうか。今日にしても、真っ当には会えていない。
母親と会う、それだけの事に彼女は、覚悟を決め、計画を立て、今日に臨んだのだろう。それ程に――。
それが私にはよく解った。今なら彼女に、魔法を使わせても良いとさえ思えていた。




