何代目
彼女は私の口を手で塞ぎ、親指で向こうを指した――話の途中だが着いてしまった。
おそらくここが大使館の中枢であろう建物、『六鳴館』へ――。
歴史を感じる古びた洋館は、私からすればモダンなものだった。
二階建てを優に超す大きさに、真っ白な壁面、玄関には左右に太く大きい柱が立っていた。
どこぞの貴族でも住んでいたのかと思う程立派で、それ程の人物が居たに違いない。
しかし、その外見から、オズの大使はもちろん、人が今でも住んでいるとは思えなかった。
嵐山さんは中を探ろうと建物の周りを見回していたが、窓は内側から隠され、中は窺えず、私達の身長では、それらから中に入れそうもなかった。
侵入するとなると、玄関から入るしかなさそうだ。
「さて、作戦だが、何かいい案はあるか?…有る訳無いよな――仮に、うまく玄関からと入れたとして、取り敢えずあたしは三代目には興味が無い。個人的に用がある、ある人物を探す。今日を逃せばもう…」
「何故?『雷鳥』には興味がないのでしょう?一体誰に会いに行くの?――彼女。貴女のお友達が関係しているの?それとも『二代目』?」
走馬灯で見た、彼女の友達兼、お目付け役。
あの後彼女がどうなったのかは分からないが、嵐山夜音の走馬灯から私は、彼女の存在の大きさだけは感じ取れた。
それに二代目雷鳥。彼女との関係は一体?――。
「ふんっ、あたしにそんなもんはいない――唯、あたしが『二代目』の娘で、『初代雷鳥』の孫からだ」
「貴女が雷鳥の娘で、孫ですって!?――」
雷鳥の娘で、孫。なんとなく気付いてはいたが、母と祖母が雷鳥とは。
つまり彼女のお婆様は、自由文化学園の創設者で、『初代雷鳥』という事――。
しかし、雷鳥といえば、『真・婦人協会』。
何故、二代目の母親は女性街に?ここは女性解放戦線の――。
「『二代目雷鳥』とはあたしの母で、『新しい太陽』の代表『だいひょう』。つまり頭だ――どの走馬灯を見たかは知らないが、何かしら見ただろう。母は祖母『初代雷鳥』のやり方が気に食わなかった。だから独立した自分の組織を造った」
『新しい太陽』――。『真・婦人協会』とは別の女性解放運動組織。
通称女性解放戦線。その代表が彼女の母親。もしかしたら、走馬灯での出来事、学徒動員が関係しているのだろうか。
走馬灯で見た人達も『新しい太陽』の一員なのだろう。




