異国
彼女は徐に柵を一本一本揺すり、何かを探り始めた。
鉄製の柵は、一本は細いとはいえ、力尽ではどうにもならなそうだった。
「確か、ここら辺だった様な――」
そう言って、柵の一本を手にしたとき、柵の一部が切り取れた。
たまたま取れたというより、事前に切っていたのだろう。今日の為に計画を立て、用意していたらしい。
「行くぞ――」
切れた柵の隙間は、人一人がぎりぎり通れる程の幅しかなく、柵の向こうには、生い茂る木々もその行く手を阻んでいた。
しかし、彼女はお構いなしに進んで行った。私に至っては、お構いなしに進む彼女に少し引いてしまっていた。
「えっ、ここを通るの?――他に道は無いの?」
「馬鹿っ!早く来い!」
私は嫌々、通るのがやっとの隙間を無理やり抜け、木々の枝をかき分け、やっとの思いで抜けた――。
――その先は、私の想像を遥かに超えていた。
「――ここは…、外国?」
そこにはまるで夢の様な、見た事の無い異国の風景が広がり、地元の街から別世界へ来た思いだった。
見た事もない洒落た建物、中心の広場には噴水。空気の匂いや、空の色までが違って見えた――人の姿は見えないが、きっと外国の貴婦人が住んでいるに違いない。
「素敵――」
まるでおとぎ話の世界。
私はここへ来た目的や、ここが何処かも忘れ、つい街の真ん中で歌って、踊りたくなってしまった。
「おい、それだけはやめろよ――あたしは、他人の鼻歌ってやつが大っ嫌いなんだよ」
「ハッ!つい――」
我に返ると、体が勝手に踊ってしまっていた。危うく歌まで歌いそうになってしまっていた。
「綺麗な場所でしょう。私の国によく似ているわ――フフッ、不思議な組み合わせね」
――!?まるで待ち伏せていたかのように彼女はそこに居た。
驚きはしたが、不思議ではない。何故ならここは、女性街。彼女達の国なのだ。
探す手間が省けたのは良いが、果たして、今彼女に見つかる事は良しとするのか、私には分かりかねるのであった。
「ハイネ…。随分御誂え向きだな――魔女の国へ観光にでも行くのか?」
「待っていたわ、『三代目』――遅かったわね、舞踏会はもう始まっていてよ」
『三代目』?――。走馬灯でも彼女の事をそう呼んでいた。
彼女は一体――。




