大使館
「舞踏会へ行く――お前もそうだろ?」
私は別に舞踏会へ行きたい訳ではない――『オズ』へ行く為に…。ついでに環や、万千にも会いたいし。
「ところで、『大使館』って何?」
「ズコ――ッ!今、知っている流れだったろ。大使館も知らないのか?」
「そんなに驚かなくても…。大袈裟よ」
「いいか?大使館っていうのは、つまり、あれだ…。『大使』が居る所だ」
「じゃあ、『大使』って何?」
「『大使』てのは、あれだ。外国の…、役人のことだ。その役人の家が『大使館』だ――つまり、女性街ってのは、『大使館』の通称で、あれなんだよ」
「それじゃ、何が『国』なの?」
「お前も分からねぇなぁ。外国の役人が住む家だぞ。そこはもう、外国よ!」
彼女は満足げな顔してはいるが、私は何一つ納得いかないでいた。
「外国の役人って、ハイネって人?――そもそも、何故そんな所に、女性解放戦線が?」
「『大使館』ってのは、もう外国だからな、手出し出来ないんだよ、警察でも。女性解放戦線にとっては、これ以上ない隠れ家ってわけだ――それに、それ自体にハイネは関係ない」
「外国が協力しているというの?一体何処の国が?」
「知るかよ。今度はこっちの番だ、質問に答えろ――お前こそ女性街へ行ってどうする?どうせ何も出来ないだろ。あっちから来てくれるまで待てば良いだろ」
「分からないわ――ただ、私一人だけなら諦めていた。貴女が…、貴女がいたから、私は諦めなかった。それだけよ」
「なんだそれ。やる気あんのか?覚悟出来てんのか?――女性街はそんな甘くないぞ!最悪死ぬかもしれないぞ。それでも行くのか?」
「行くわ。貴女もそうでしょう?」
「上等。心中する覚悟はあるようだな。じゃあ、行くか!」
そう言うと彼女は、林が覆う柵に向かい立ち、背丈以上はある柵を見上げた。
「まさか、ここが!?」
「――そう、女性街だ」
木々が覆う柵から中の様子は窺えないが、その大きさは私の通う学校の敷地より広いだろう。
これだけ広く、猶且つ身近にあったのでは気付かない訳である。そもそも、女性街が何かも分らなければ見つけられる訳も無い。




