相乗り
私は赤バイの側車に飛び乗り、女性街へ向かった――。
そこまでは良かった。しかし、一つ誤算があるとすると、今さっき死にかけた原因を私は考えもしなかった事だ。
このご時世、女性がクルマの運転など出来る訳も無く、まして二輪自動車など警官位しか乗っておらず、何故彼女がそれに乗っているのか――。
デモクラシーのおかげで、二輪自動車の運転も乙女の嗜みにでもなったのか。しかし、この際そんな事どうでもよく、問題は彼女の運転が余りにも危険極まりないことだった。
「貴女!何処で赤バイを?――運転は誰に教わったの?」
「自己流だよ!今話し掛けるな!舌を噛むぞ!」
血の気が引いた。生きている心地がしない――徐々《じょ》に上がる速度は、彼女の何を駆り立てるのか、笑みさえ浮かべていた。
「あぁ!危ない!!」
心臓に悪い。寿命が縮む――。
クルマに自転車や壁、人にもぶつかりそうになり、実際私とぶつかっているのだが、何ともぶつからずたどり着いたのは奇跡的だった。
体感としては何十分と乗っていた様な気分だったが、実際にはほんの数分のことだっただろう。
やっと赤バイは停まった。
何とか無事にたどり着いた場所は、私も何度か通った事のある場所だった。
林が柵に覆われた道路沿いで、ここからでは敷地の終わりが見えず、そこには何かがある様には思えなかった。
「はぁはぁ…。休憩させて、これ以上は無理よ」
「中々うまいもんだろう。怪我一つない」
自覚はあったのか――よく見ると、彼女は微かに震えていた。
「これからどうするの?歩いて行ける場所でしょうね?」
「いや、問題はそこじゃない――お前、『女性街』が唯の街か何かかとでも思っていたか?」
ギクッ――。違うの?
「――女性街とは『大使館』のことだ。ハイネも言っていたが『国』そのものだよ」
「『大使館』!?――貴女はそこへ、女性街へ一体何をしに行くの?」




