世界征服
「おぉ!やれば出来んじゃん!」
!?私じゃない――しかし、たしかに今のは魔法だ。魔法で自転車が吹き飛んだ。
魔法を使った時の疲労感が私に有り、それが証明している。それ以外での証明は出来ないが、ならばあの自転車をどう説明出来ようか。
いや、この際それはどうでもいい。問題なのは一体誰があの自転車を動かしたかだ。
私が…。私以外いない、出来ない。この疲労感も。
しかし、だから解る、私ではない――いや、そんなことありえない。そんな訳ない。
「――一つ聞いていい?貴女、もし魔法が使えたら何に使う?」
「そんなの決まってる、世界征服だ――なぁ、もっかいやってくれ。どーんっと、『チェースト』!って」
ド――ン!!
その瞬間、私の後ろに建つ民家の屋根瓦が吹き飛んでいった。
驚き、身を屈めた私に対し、彼女は呆気にとられていた。
「そう言えば用事を思い出した。あたし、もう帰らないと――それじゃ、さようなら」
「待て待て待て。待って!。これは夢よ、走馬灯の続きよ。そうに違いない。でなくては、貴女は一体――」
彼女、嵐山夜音は魔法を使えてしまっていた――そして私は、魔法が使えなくなっていた。
一気に疲れがどっと出た。足元がふらつき、くらくらする。目眩が…。
これが夢なら早く覚めて――あぁ、つねる前から頬が痛いわ。
何故かは知らないが、彼女は魔法が使えていた。
しかし、魔女である筈がない。なのに、自転車を吹き飛ばし、民家の屋根まで吹き飛ばした。紛れも無い事実で、現実だった。
つまり、どういうことか。簡単に整理すると、彼女は魔女ではない。魔女になった訳でもない。
しかし、何故か私が疲れている。ということは、彼女は私の体力で魔法を使ったことになる。訳が分からない。
それでも私が魔女である事は変わらない筈。しかし、私は魔法を使えない。
とても複雑な状況になってしまった。
そう考えていいだろう――そんな訳は無い、そんな事ありえない。つまり、どういうことか?
「この力さえあれば、女性街なんて簡単に…」
「物騒な事言わないで、私の体力が持たないわ。いい?よく聞いて。何故か分からないけど、貴女が使える様になったその力、『魔法』は、人に知られてはいけない事で――」
「チェスト!チェスト!チェースト!!」
所構わず魔法を使う彼女は、まるでその力の意味を理解していなかった。
そして私も――。
それはとても危険で、私の命に関わることだった――。




