チェスト
女性街の場所を知っているということは、やはり女性解放戦線の一員なのだろうか?
走馬灯でのやり取りからしても、何かしろの特別な存在だろう。
そんな彼女、嵐山夜音の秘密を知ることが出来れば、彼女を利用して女性解放戦線を――女性解放戦線を何だ?私は一体何を考えているんだ。彼女を利用しょうとして、秘密を探り、一体何をしようとしているんだ…。
私は『オズ』へ行きたい。
それ自体は、女性解放運動とは関係ないことだ。ならば、嵐山夜音も、彼女の素性も私には知る意味も無い。ましてや、それこそ無関係だ。
万千や、環についてもそうだ。彼女達の意思を私は知らない。知らずに私は何をしようとしていたのだろう。
確かめたい。女性街に行って、万千に、環に――。
「ふぅ。いくわよ…」
はっきり言って、魔法の出し方なんて私は解らない。
何の為の魔法か、魔法によって何が起こったかも。さっきはうまくいっただけで、そんなに都合よくいくだろうか。呪文を唱えただけで。
私は取り敢えず、両手を自転車に向け、気を集中させた。少しで良いから自転車よ、動いて――。
「――チェスト!!」
「――!」
――まるで時間が止まったかの様に静まりかえり、沈黙の時が流れた。
自分でも驚くぐらいに何も起こらず、恥ずかしさだけが込み上げてきた。おかげで、私も彼女も動けずにいた。
「おい、何も起きないぞ。どうなってんだ」
「も、もう一度よ――ふぅ。チェースト!」
動かない、何も起こらない――魔法が使えない。何故?むやみやたらに使えないものなの?
「チェスト、チェスト。…チェスト!」
「おいおい、おい。どうした。もっと集中しろ、力が足りないんだよ」
「チェ、チェスト…。はぁ、はぁ、チェ…スト」
「もっと腹から声出せ、力め。違う、こうだ――『チェースト』!!」
ガシャ――ン!!
私は諦め、彼女が痺れを切らしたその時――自転車が吹き飛んだ。
彼女の期待通りに。




