名前は――
時間――工場から抜け出し、女性解放運動が始まる時間。
今更私は、ここに居る全員をどうにか出来る訳はないし、『女性解放戦線』だとしたら女性には危害は加えないだろう。しかし、それでも彼女だけでも――。
『一緒に来て!』
私は彼女の手を掴み、出口へ向かった。女学生達の視線や、教師達の声を無視して。
この工場の間取りは分からないけど、取り敢えずこの場から離れ外へ。
隙があれば止める事が出来るかもしれないし、ついでに女性解放戦線についても探りたい。あの教師は一体――。
闇雲に歩いてはいたが、外に出られた。中が暗かった所為か、日の光がとても眩しい。よくもあんな所で作業させていたものだ。
さて、どうしたものか――。
「想定外だわ。まさか貴女が二代目の命令に背くなんて――でも、私は二代目を裏切れない。戻って任務を全うするわ」
『えっ?今なんて?――』
「貴女には黙っていたけど、私は選ばれたの。今日、この計画に――」
『貴女、一体――』
「ごめんなさい。私、貴女を騙していたの。『二代目』の為、貴女の為。その為に貴女を監視していた…。でも、それも今日で終わり――貴女はここに居て。『三代目』に何かあってはいけないわ。私は夜音が『三代目』に相応しいと思っているわ」
『?。何を言っているの?』
「ごめんなさい、私が行かないと別の誰かが代わりになるわ――出来れば最後まで知られたくなかった。でも嬉しかったわ、私を連れ出してくれて――」
『あっ――』
「私、夜音の友達になれたのかしら――」
そう言うと彼女は、私の手を振り解き、再び軍需工場内へ入って行った。
名前も知らない彼女だが、これだけ走馬灯を見せられれば情も移る。
そんな彼女が女性解放戦線の一員だった事に、私は只々呆然とし、動けずにいた。
―――――。
「――きろ、おい、起きろ!おーい。生きてるか?」
気が付くと目の前には、金髪でセーラー服を着た女性が私の胸座を掴み、見下ろしていた。
頬が痛い。きっと何度も叩かれたからだ。もっと優しくしてほしいものだ。
これは現実?私は生きている?――。
「八乙女ツクスだな?」
「――嵐山夜音ね?」




