今日
―――。軍需工場。彼女が事を起こすであろう『今』。
規則正しく並べられた机の上には、見慣れぬ道具に機械。
ざっと見渡しただけでも20~30人は居るであろう女学生。
薄暗く、重く息苦しい空気。今から何が起こるのか、彼女達は無事に済むのか、私は何かすべきなのだろうか――。
当の『先生』の彼女は、教師という立場からか、我が物顔で歩き回っていた。
『ここも『紅館』の様にしようとするなら、彼女はここに居る全員を避難させるつもりだろうか――』
「えっ?夜音、何か言った?」
あれ、嵐山さん何か言ったのかな?まぁ、どっちにしろ、私には分からない事だ。
「ねぇ、聞いているの夜音?さっきからブツブツと――」
おかしい、何か変だ。嵐山さんの体が、私と同じ様に動く。
違う、嵐山さんが私を真似ているのではない。私が嵐山さんの――つまり、どういうことだ?
『もしかして、聞こえてた?今の』
「えぇ、何を言ったかは分からなかったけど」
私の言葉が届いた!?これは嵐山夜音の走馬灯ではないの?それなのに、私が見るだけではなく、自由に動いて話せるなんて…。
まるで嵐山さんの記憶を覗き見るみたいな。いや、今までもそうか。
しかし、そんな事をしてもいいものか?嵐山さんの記憶の中で勝手に動き、もしも記憶が変わってしまったら――。
『そういえば貴女、お名前は?』
「はぁ?何をふざけて――怒られるわよ」
身を潜めながら目で合図された先には、あの教師が居た。彼女が居るという事は、彼女が主犯なのだろうか。もしかすると、仲間も何処かに。
例えこれが走馬灯の中だとしても、このまま彼女を放って置く訳にはいかない。
きっとこの学徒動員の時間に――時間…。それは何時だ?急がないと手遅れになる。
「そう言えば、夜音。そろそろ時間ではなくて?」
『時間って、一体何の?』
「何のって、貴女が言った事でしょう。用があると――」




