秘密
「このことは他言無用にね。もちろん、貴女の友人にも。秘密が漏れれば貴女だけでなく、その友人にも危害が及ぶかもね。じゃ、よろしく」
そう言うと彼女は、また私に目配せをするのだった。
―――。場所は変わらず、また軍需工場だ。目の前には例の友人であろう彼女が――。
「どうしたの?夜音。改まって話だなんて」
「…――。」
「?もちろんよ」
「…――。」
「ちょっと待って、誰か来るわ」
「貴女達何をしているの?作業はもう終わりよ――こんな所で内緒話でもしていたの?」
まるで測ったかの様に現れたおかっぱの彼女は、私達の話を遮った。
「先生…。なんでもないです――それより、何時になったら終わるのでしょう?このような事は」
「大丈夫。直ぐにでも良くなるわ。雷鳥先生が付いているもの。ねぇ、嵐山さん――」
そう言った彼女は微笑んではいたが、まるで何かを、私を見透かしている様だった。
『ん?先生って、彼女が?――』
―――。今度は学園内の何処かだろうか。ここにも彼女が居た。『先生』なのだから当然だが。唯、友人の彼女は居なかった。
「分かっていると思うけど、貴女は余計な事はしないでね」
「…――。」
「あら、ごめんなさい。私てっきり…。まぁいいわ――決行は明日。学徒動員時。貴女は時間が来たら、軍需工場から抜け出して、指示があるまで待機していて」
「…――。」
「それは言えないわ。明日になれば分かる事よ」
彼女は何かをするつもりなのか?『雷鳥』の『真・婦人協会』とは別に…。
一体何を――分かり切っている、今さっき体験したばかりだ。きっと軍需工場を…。ならば彼女は、女性解放戦線なのだろうか。
それに、嵐山夜音。彼女もまた、環の様な立場なのだろうか――。
―――。教室に何時もの彼女。『今』私が見ているそれは、彼女の言う『明日』なのだろうか。
「――ね、――夜音。夜音、聞いているの?そろそろ時間よ」
「…――。」
「どうしたの、顔色が悪いわ。今日は休む?」
「…――。」
「わかった。先に行っているわ――」
彼女はどうなるのだろう。嵐山さんは今から何が起こるか知らないみたいだけど。もし知っていたら、彼女が行くのを止めていただろうか、この友人を――。




