夜音
この極真面目そうな彼女は一体誰か――きっとこの学校の生徒だろう。
ミモレのはかまに、ハーフブーツ姿は女学生そのもの。ならば私、つまりこの夢の当人も女学生だろうか。
つまり私は、夢の持ち主に変わり、記憶の断片を走馬灯の様に見せられているだけなのだろうか――だとしたら何も通じない訳だ。では、私の走馬灯は何処へ?
私の目の前に居た彼女だったが、気が付くと消えており、私もいつの間にか外へ出ていた。
「ごきげんよう、嵐山さん。フフッ――今日も素敵な髪ね」
わっ!――。まただ、彼女が急にあらわれた。しかし、さっきと違ったのは、はかまが違う。ということは、別の日、別の場面に変わったのだろうか。
挨拶だけで、また彼女は消えてしまった――途端に場面が変わり、今度は校門前だった。
「ごきげんよう――また明日」
そしてまた場面が変わり、彼女が語りかける――ただそれだけの繰り返し。
「嵐山さんもご一緒に昼食でもいかが?」
「嵐山さんは、どうして何時も一人でいるの?――」
「嵐山さん」「嵐山さん…」
「嵐山さん――いいえ、夜音」
「夜音」「夜音」「夜音…」……。
―――。場面は入れ替わり立ち替わり、同じ彼女が一言言う度に替わって行った。
何度も何度も。それだけを繰り返した…。
私の名前は『夜音』――。『嵐山夜音』。
さすがに疲れがたまり、罪悪感さえ消えたころ、場面はやっと彼女以外の事を映した。それでも彼女はまだ居るが…。
新たな場面には、もう一人女性が居た。気品のある着物姿の年配の女性。
遠くではあるが、その姿勢、立ち姿だけで美しさが伝わってくる。あの御婦人は一体――?
「夜音。お婆様が来ているわよ」
お婆様?私の?――いや、私ではなく、嵐山さんの。貴女はもしや良家の令嬢なのか?
「学園に来るなんて珍しいわ。何かあるのかしら」
「…――。」
「何言っているの、学園創設者の孫だなんて立派な事よ」
「…――。」
「おかげでこの自由文化学園があるのよ。感謝しなきゃ」




