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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯2 もう一人のおとめ
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空気

 私(彼女)が何を言ったか分からなかったが、会話のそれには聞き覚えが有った。


 自由じゆう文化ぶんか学園がくえん高等こうとう女学校じょがっこう――。けん唯一ゆいいつの、いや私の知る限り、この国唯一の進学しんがく女学校。


 作法さほうに料理、裁縫さいほうなどの所謂いわゆる花嫁はなよめ修業しゅぎょうおもに教える通常の女学校とは違い、学業がくぎょう優先ゆうせんし、大学校だいがっこうへ進学するための学校。


 女性の自立どくりつ尊厳そんげんの為の学校――。


 ここが自由文化学園で、嵐山あらしやま夜音よね創設者そうせつしゃまご随分ずいぶんはいから(ハイカラ)走馬灯そうまとうである。


 私は彼女の走馬灯を――ということは彼女も、嵐山夜音も今、命の瀬戸際せとぎわにあるのだろうか?


 そうでなくては、走馬灯など滅多めったに見られるものではない。では、私の走馬灯は一体誰が見ているのか?まさか、嵐山夜音が――。


 この状況じょうきょうよくよく考えてみると、あの場所に居て、命の瀬戸際にある人物は私か、赤バイに乗っていた彼女しかいない。


 ならば彼女が嵐山夜音!――。


 進学女学校にも通う創設者の孫が何故なぜ、赤バイになんて乗っていたのかはなは疑問ぎもんである。


 ―――。ふたた場面ばめんは変わり、その様子ようすから今度は全校集会のようだった。朝礼ちょうれいだいの上で話しているのは嵐山さんのお婆様ばあさまであった。


 相変あいかわらず美しく、気品きひんがある。それに、どうやら本当に創設者だったらしい。


「本日は皆さんに大切なお話がございます――来るべきおおいなる決断けつだんの日にそなえ、この国の発展はってん繁栄はんえいの為――この国の良き女性に、母にるべく我々は――ですから、この身をささげる覚悟かくご尽力じんりょくすることとちかいましょう――ですので、が自由文化学園でも勤労きんろう動員どういんおこなう事が決まりました」


 まわりからはどよめきがれた。自由文化学園も例外れいがい無く勤労動員にり出されることになるとは思ってもみなかっただろう。


「夜音、どうなってしまうの?私達」


 自由文化学園の様な先進的せんしんてきな学校でもこんな事になるなんて、むしろ勤労動員など反対しそうなのもだが。


「お婆様から何か聞いてないの?こんな事ってないわ」


 勤労動員というよりは、その先に不安ふあんいだいているのだろう、勤労動員が何を意味しているのか――。


 ―――。場面は変わり、学園の部屋だろうか、立派りっぱ書斎しょさいの様な所だった。部屋には私とお婆様の二人きりで。


「…――。」


「えぇ、分かっています。貴女あなたの母親の事は…、貴女以上に。だからこそこの学園、いえ、全生徒の為にも必要な事なのです」


 母親。嵐山さんのお母さんの事だろうか。お婆様の娘さんであるのだから、さぞ立派りっぱな方だろう。勤労動員の事についてきっと心を痛めているに違いない。


「…――。」


「全生徒に非国民ひこくみんになれというの?それが何を意味するか解っていて?考えただけでもおそろしいわ」


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