雷鳥
火事に気付き、教師達が駆け付けてきたが、適当に誤魔化し、その場は切り抜けられた。
環も万千も、今日はもう帰った事にし、火事の原因などは秘密にした。
女性解放運動のことなど言える訳がない。環が協力して、万千を誘拐しただなんて…。
「八乙女ツクスさん、貴女はもうお帰りなさい。後は、私達で片付けるから――大丈夫よ。環さんも、大郷司さんの事も心配いらない。私達がついているわ」
そう言うと、担任の教師は行ってしまった。
あまりにもあっさりと帰してくれるのだな、教師達も意外と冷静だし。中に誰も居ないと判れば、こんな建物燃えてしまえ、と思っていたに違いない。
申し訳ないが、面倒事に巻き込まれる前に帰らせてもらおう。私には火事の始末に付き合う程の余裕も気力の無い。
今日は疲れた。家に帰って、帰って私は一体どうすればいいのか――そんな事は解りきっている。先ずは『女性街』に行き、あの女性に会い全てを聞き出す。
ついでにあのバカも連れ戻すか。
そう言えばあの女性、環を『オズ』へ連れて行くと言っていた。彼女は『オズ』の場所を知っているの?そもそも、何故環は『オズ』へ行きたいのかしら?
――それを知る為にも、私は女性街を見つけるしかなかった。
『女性街』――。噂に事欠かない場所。女性の権利や自由、法律、政治参加に選挙権。恋愛まで。そこに行けば手に入らないモノは無いらしい。
乙女達は、そんなおとぎ話に心躍らされていた。尾鰭をつけたであろう話だが、実際に存在する場所だなんて、誰が信じていただろうか…。
彼の万千や私も。
もちろん今直ぐにでも行くべきだろうが、いや、行きたいところだ。
しかし、噂が噂でしかない理由は、まさに誰もその存在を信じておらず、探しても見つからないからだ。
そもそも、それが何なのか私には分からない。街なのか商店街なのか、またはどちらでもないのか。
私はその程度の所ではないかと思っていた――『国』?そんなことありえない。
「これも、女性解放運動の仕業かな?――『雷鳥』とかいう奴の」
「『真・婦人協会』だろ。まさかうちの学校に来るとは――」
聞こえてきた会話は、教師達のものだった。驚いたことに、どうやらこの様な事件は、他の学校でも起こっているらしい。
教師達の会話によると、女学生のけが人も出ているらしい。誰の仕業かは分からないが、やりかねない人達を私は知っている。
さらに女性解放運動組織も色々あり、その中でも『雷鳥』なる人物が絶対的権力を持っているらしい。
だとしたら、あの女性も――確か『新しい太陽』。その組織も、『雷鳥』の部下なのだろうか?
「はぁ――帰ろう…」




