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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯1 乙女のおとめ
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辞めたい

 女性はクルマに乗り込むが、私には止めようがない。これ以上聞きようがない。なすすべがない。聞きたくもない。


 クルマは起動きどうし、女性のすわ側面そくめんまどが開かれた。


「あぁ、それと。魔法まほうはもう使ってはいけないわ。魔女まじょりに会うわよ」


 なんなのそのおぞましい単語たんごは。もう家に帰って横になりたい。


 適当てきとう説明せつめいはされたが、その真偽しんぎ以前いぜんに、今日の、今の出来事すら信じられなくなってきた。夢だと言ってもおかしくない。


 私を置いて走り出すクルマの窓からは、たまきがこちらをうかがい、のこされた私は呆然ぼうぜんとクルマがるのを見ていた。


 万千まち、楽しそうだな…。


 環と万千と、女性のるクルマは、そのまま学校の門をけ走りっていった。


 どうすることも出来ない私は、取りえず館内かんないへ戻ろうとしたが、勤労きんろう動員どういん作業さぎょう専用せんよう施設しせつ通称つうしょう紅館くれないやかた』は、すでに火におおわれ、一階は火の海だった。


 気が付かなかった。それに、それどころではなく、おどく気力も無かった。


 中には誰も居ないだろうし、この建物が無くなるおかげで、明日から春休みを満喫まんきつできるだろう。裁縫さいほうなんてやってられない。


 しかし、そんな気分になれるわけが無い。


 そんなことを考えてはいたが、目の前の現実げんじつすら気にならないほど、頭の中をそれが占領せんりょうしていた。別の事を考えようとしても、頭がいっぱいで考えられない。火事などどうでもいい…。


 私は一体誰で、母は何処どこるか?――そのこたえを聞いたところで、私には何も出来ず、信じられず、理解りかいできないだろう。実際じっさい、今がそう。


「信じられない――けど、信じられる」


 女性の言う事を鵜呑うのみにするわけではないが、私にはそれが信じられた――いや、信じるしかなかった。


 私は『オズ』へ行きたい――。『オズ』へ行けば母への手掛たがかりが見つかるかもしれない。それに私は、自分の、自分が本当に『魔女まじょ』なのかを知りたい。


 何より、母の手紙に書かれていた事が本当なら、私は『オズ』へ行かなくてはならない。このままでは、私が私でいられなくなる――。


 この力が、私だけのものではなく、『魔法まほう』というものが本当に存在そんざいし、それが手紙に書いてある通りならあるいは…。


 私は何としてでも『オズ』へ行き、母に会いたい。そして出来るなら『オズ』の『魔女』の『魔法』で、私は『魔女』をめなくてはならない。そのためなら――。


 火事の炎ははげしさをし、あっという間に建物たてものつつみ込んだ。


 何故なぜだか私は、その炎から目がはなせず、その場に立ちくしていた。


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