【04】 ドアをノックするも反応なし
課長が戻って来た。
課長「戸部、丹沢、行くぞ!」
早苗「二人とも課長に心して(こころして)行くのよ」
稔江「えっ! 課長を殺して(ころして)行くの?」
戸部「ははははは」
丹沢「ははははは」
早苗「ははははは」
若石「ははははは」
課長「何、笑っているんだ! バカモンが!」
美浦市役所から課長と丹沢と戸部を載せた公用車が、
速水爽香の住民登録のある共同住宅へと向かった。
車中3人は口を開くこともなく、
黙ったままで、
車内は険悪な雰囲気が漂っていた。
やがて車は共同住宅「ハッピーハイツ」の前に着いた。
3人は車から降りた。
丹沢、課長、戸部の順に建物の階段を上った。
203号室、速水爽香の部屋の前に3人は立った。
時計が9時半を指していた。
丹沢がドアをノックした。
そしてしばらく待ったが、誰も出て来なかった。
隣の部屋のおばさんが、
自分の部屋のドアと勘違いしたのか、
窓を15cmほど開けて外の様子を覗い、
自分の部屋でないとわかると
すぐに窓は閉められた。
課長(まったくバカな奴らめ。
ボートレースに出場している選手が、
自宅に居る訳がないだろう。
だから、こういうバカ連中は、
辞めさせるしかないんだ。
市長の方針でもあるし、二人が辞めれば、
私も次は次長だな)
課長がニヤリと笑った。
丹沢と戸部の表情が曇った。
丹沢(居る訳がないよなぁ。
ボートレースの開催中だもんな)
戸部(くそっ、なんで居ないんだよ、
頼む、居てくれ!!!)
課長(いくら待ったって、
居ないものは居ないんだよ。ふっふっふ)
丹沢(私だけ退職ならまだしも
戸部さんまで退職になってしまうのは心苦しいな、
なんとかならないのかなぁ?)
課長「もうこれ以上待っても同じさ。
住んでないものは住んでないんだよ。
さぁ帰るぞ!」
戸部「あと10分だけ、
あと10分だけ待ってもらえませんか?」
戸部が深く頭を下げて住民課長に頼み込んだ。
課長「ダメだ。
こんなに長時間職場を空けている余裕はないんだからな。
さぁ行くぞ!」
丹沢が電力メーターの
アルミニウムの円盤を横目で見た。
前回と同じように動いていたが、
その動きはやはり遅かった。
丹沢(状況は同じだ。留守だな)
丹沢「はい、帰ります」
戸部は、まだ爽香が部屋に居ると信じ、
ドアの前に立っていた。
課長と丹沢は、そこを立ち去り
階段を下りて行った。
戸部は帰り際、もう一度ドアを強くノックした。
「ドドドドドン!!」
それは憤りを示すような叩き方だった。
そして、そのまま返事を待たずに
2人の後を追って行った。
3人が共同住宅ハッピーハイツの階段を降り、
階下に停めてあった公用車に向かった。
戸部(ダメだったか……)
丹沢(戸部さんに悪いことをした。
私がしっかりしていれば
戸部さんまで巻き込まずに済んだのに……)
丹沢はうなだれた。




