【12】 水道契約のからくり
そこに、ちょうど明石春菜が昼食から戻って来た。
春菜「そうよ、不思議よね。
いくらなんでも女性がお風呂、
月に2、3回なんてありえないじゃない?
だって2週間にいっぺんのお風呂じゃ、
男性にもてないでしょう?」
戸部「そこか、」
丹沢「速水さんは、ボートレースに出場していたときは、
宿舎で風呂に入り、自宅で過ごすときは、
美浦市スポーツセンターでランニングをし、
シャワーを浴びて帰っていたそうです」
春菜「そうか、そんな手があったのね」
戸部「私も、そのお風呂の話があった後に、
水道課のベテラン職員に聞いたんだけれど、」
春菜「水道課は、なんですって?」
戸部「本人名義で水道の契約をしていれば、
まず間違いなく住んでいる、と言っていた」
春菜「どういうこと?」
戸部「ハッピーハイツ203号室の水道使用契約者を調べてもらったんだが、
速水爽香になっていた」
春菜「なるほど、そこまではわかったわ。それで?」
戸部「だから、水道料金は、
本人申請により速水爽香の口座から引き落としされる」
春菜「ふむふむ」
戸部「もし、ハッピーハイツ203号室に別の人が住んでいたとして、
水道料金が速水爽香の銀行口座から引き落とされたら、
速水さんが納得いかないだろう?」
春菜「あたしなら怒っちゃうわ」
戸部「だから部屋を出る人は
必ず水道使用を解約していくそうだ。
つまり、速水爽香は住んでいる、ってことだ」
それを聞いて、君本早苗が口を挟んだ。
早苗「ということは、水道課の水口さんは
検針員に話を聞くのではなく、
水道契約の担当者に話を聞けば良かったのね」
戸部「そういうことだね」
丹沢「そして課長は、水道課の水口さんに話を聞くのではなく、
もっとベテランの職員に話を聞けば良かったんだ」
戸部「その通り」
ちょうど噂をしたところで、
課長が昼食から戻ってくるのが見えた。
丹沢たちは、蜘蛛の子を散らすように
サッと解散した。
◇
その日の夜、丹沢は爽香のことが心配になって再度、
速水爽香の部屋を訪ねた。
仕事をしていても速水爽香のことが気になって気になって仕方なかったのだ。
丹沢は、速水爽香の部屋に着くと、
すぐにドアをノックした。




