【11】 つながった二つの首と仲間の協力
戸部の島(事務机の集合体)では、いつもどおり、
戸部考一と君本早苗が、
食事だけ済ませて自席に戻って来ていた。
戸部「やっぱり速水爽香は居たな」
戸部が珍しくニヤニヤしながら言った。
丹沢「ええ、皆さんのお陰で、
私の首がつながりました」
早苗「良かったぁ」
戸部「私の首もつながったよ」
早苗「あたし、どうなるかと思って冷や冷やしたわよ」
戸部「そんなに心配してくれたんだ」
早苗「あたりまえでしょ」
本気でふくれていた。
戸部「すまなかった」
早苗「もう、いいわよ。丹沢さん、お昼は食べた?」
丹沢「はい、ハッピーハイツからの帰り道、
コンビニでサンドイッチを買って、
歩きながら食べました」
早苗「それじゃ、食べた気がしないわね」
丹沢「それは、ここに居る職員みんな同じでしょう。
お互い様です」
早苗「そうね。民間企業も同様だし、
日本人って欧米人と比べて勤勉よね」
丹沢「ええ、そう思います」
戸部「今日はまだ、食事が取れるだけいいよ。
3月末から4月にかけては、
昼抜きも多かったからなぁ」
早苗「そうそう、あの頃は、転入、転出者が多くて、
昼食無しですものね」
丹沢「ところで、戸部先輩は、
速水爽香が部屋に居ることを知っていたんですか?」
戸部「まぁな」
丹沢「どうやって知ったのですか?」
戸部「同期に入所した公家さん、
今、美女来公民館に勤務しているんだ。
それで公家さんに『通勤の帰りでいいから、
ハッピーハイツの203号室の明かりがついているかどうかだけ見て欲しい』
と頼んでおいたんだ。
昨日、公家さんから電話があって、
『明かりがついていた』って、連絡があったんだよ」
早苗「だから、あのバカ課長に
『速水爽香が居なかったら戸部、お前も同罪で退職願を出してもらうよ』
って言われても動じなかったのね」
丹沢「さすが戸部さんだ。根回しがいいですね」
早苗「あたし、心配して損しちゃったわ。
どうしてくれるのよ」
戸部「随分心配かけちゃったな、ごめん」
丹沢「そうそう、水道メーターが、
お風呂2、3回分の理由なんですが、」




