【10】 丹沢の優しさ
爽香「ウ、ウウウッ。ウワーッ、ウウウッ。
ウウウッ、ウウウッ、ウ~~~」
爽香が大声で泣き出した。
丹沢の胸に顔を押しつけて。
爽香は泣くのを我慢していた分、
堰を切ったように周囲を気にせず泣いた。
爽香は泣き止まなかった。
丹沢は強く背中を抱き寄せ、
右手で爽香の背中をさすり始めた。
そんな時、隣の部屋から
70歳くらいのおばさん(市原和子)が出てきた。
おばさん「なんだろうねぇ、この大きな泣き声は?」
おばさんは、爽香の部屋のドアが半開きになっていたのが気になり、
開いたままのドアに首を入れ爽香の部屋を覗いた。
おばさん「あらまっ!! 昼間から抱き合っちゃって。
女を泣かせて、まったく困った男だねぇ!」
おばさんはそう言うと、
あきれて自分の部屋に戻って行った。
丹沢はドアを閉めたかったが、
とても動ける状態ではなかった。
爽香はしばらく泣いていたが、
隣のおばさんの言葉がきっかけで、
爽香の気持ちがそっちへ行ったのか、
やっと泣き止んだ。
そのタイミングを計って丹沢が言った。
丹沢「このままちょっと待っててください。
私、コンビニで何か買ってきます」
と、言うと同時に丹沢は走り出した。
丹沢は近くのコンビニ『セマーソン』に着くと、
適当に温かい食べ物と飲み物を買い、
すぐに爽香の部屋へと戻って行った。
丹沢「これ食べてください、
私はもう戻らないといけないので市役所に戻ります」
一方的にそう言って食べ物を床に置き、
丹沢は市役所へ戻って行った。
丹沢が速水爽香の部屋から市役所に戻って来た。
車は課長と戸部が乗って帰ってしまったので、
丹沢はひとりで、小一時間ほど歩いて帰って来た。
市役所に着くと時計の針は、
12時45分を指していた。
丹沢「ただ今戻りました」
早苗「お帰り」
課長を含め半数以上の職員がお昼で居なかった。
ただ、カウンターの受付窓口には、
交代で職員が残っていた。




