表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
久遠の輪廻 ―アオイ妖忍伝―  作者: 優木悠
第十章 久遠の輪廻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

192/199

十之十七

 だが鶫は冷静に炎の霊気を読み取り、性質の反発する霊気を鎖に流した。炎が鶫に達する直前に、ぱっとはじけて消滅した。

 どんなものよ、と鶫が得意げに言い放とうとした瞬間であった。

 強烈な力で鎖が引っ張られた。

 あっと叫んだ時には、鶫はエミリオ神父を中心に弧を描いて、空中に舞いあがっている。

 直後、ふたりの女の悲鳴が重なりあい、身体がもつれあい、地面に転がっていた。

「なにやってんだよ、乳でか女!」

「油断してないでよけなさいよ、大女!」

 罵り合いつつ、ふたりは同時に飛びのいた。

 ところへ、エミリオが飛び込んで来、炎をまとわせた拳が大地を穿った。ふたりが避けた後の大地が地響きを立てて砕ける。

 瞬く間もあたえず、嵐がエミリオに飛び込んだ。

 そうして拳で殴打し、脚で蹴りあげ、休む間もあたえず攻撃を連続させる。

 だが、エミリオはそれらの攻撃を、いともたやすくいなし、避けてしまう。

 ――この神父は……。

 と鶫は思う。

 最初闘った時、この男にまったく翻弄されたのは、私たちが未熟だったからだ。しかし、あれから数カ月、旋律の律動も身に付け、体技も鍛え直したのに、それでもまるで技量が追いついていない。この男は、ただの魔道に堕ちた神父などではない――。

 攻防を続けていたふたりの拳がぶつかり合い、直後にぱっと間合いをとって離れた。

 鶫が短刀を投げた。

 エミリオがさっと身を沈めて躱す。

 短刀は(つか)から伸びた鎖によって操られ、かわしたエミリオをさらに追った。

 が、エミリオは、その高速で迫る短刀の柄をたやすくつかんだ。

 あっと思った鶫の身体に電流のような衝撃が走った。鶫は周囲の炎すらもゆるがすような悲鳴とともに、のたうちまわり、やがて気を失って動かなくなった。

 エミリオは、にっと口の端をゆがめた。

 それを油断とみて、嵐が突撃する。

 嵐の渾身の拳の一撃を、エミリオはするりと躱し、躱しつつ身体を回転させて嵐の腹に膝蹴りをいれた。

 カウンターの一撃を喰らった嵐は、数間も吹っ飛ばされ、地表を転がった。

 背を伸ばしたエミリオが、静かにつぶやく。

「さて、どちらを先に始末してくれようかな」

 うめきながら転がる嵐を見、気絶している鶫を見、そうして、両腕に炎を灯らせた。

「同時だッ!」

 両腕から蒼紫の火球がふたつ、一直線に目標に向かって飛んだ。

 刹那、鶫の身体が上空へ飛んで火球を避け、嵐が腕に旋律の律動を流して炎を砕いた。

 着地した鶫に、エミリオが侮蔑の笑みを贈った。

 鶫が気絶したふりをして、好機をうかがっていたのはお見通しだったようだ。

 嵐が両腕を構え、鶫が鎖のついた短刀を構え、ふたりは、じりじりと、エミリオとの距離を縮めていく。

 ――どちらが先に攻撃してくるか。それとも同時か。

 エミリオは、左右から迫るふたりへと、間断なく視線を走らせた。

 どんどんと間合いが狭まってくる。

 五間、三間……。

 ――はて……。

 ふとエミリオは不審を感じた。

 すでに、鶫は鎖の間合いに入っているのに、なぜ攻撃に打って出ないのか――。

 エミリオははっと何かに気づいた。くるりと身体を翻し、上空に向かって腕を振り上げた。

 そこに、燃える御殿の屋根から飛び込んで来つつ、刀を振りおろす碧がいた。

 霊気の炎をまとった拳と、旋律の律動を流した宝刀暁星丸が空中でぶつかり合い、互いの霊気が反発して弾け、ふたりは飛びのいた。

 ところへ、嵐の飛び蹴りが襲った。

 エミリオは間一髪で回避して、かかと落としで、嵐を叩き落とす。

 息つく暇もなく、鎖分銅が飛んで来るのを、腕を回して弾き飛ばす。

 その間に、嵐が後ろに跳んで間合いをとった。

 エミリオは、三方から囲む三人の女に意識を集中させた。

 ――さてどうしたものか。

 さすがのエミリオも背筋に汗が流れるような思いだった。動いた瞬間に、自分の命脈が尽きかねないような恐怖が全身を支配していた。

 ――ここで命が尽きても、別段おしくもない人生だったが……、だからといって、このままこの小娘たちに命をくれてやるのも、(しゃく)にさわるな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ