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八百万の果て  作者: 三雲にに
真偽ノ甘噛(世界編)
213/214

72話 上昇

LJがなにすんねんと悪態をついて、ヴァレリをあっけらかんとしてみている。

「はあ……馬鹿ばっかりで疲れる……」

ヴァレリはソファのクッションにうもれた。

「わいのお気に入りのTシャツが台無しやで」

LJは黄色いワンポイントのはいったTシャツをぬいだ。

「なあ誰か服かしてやー」

「ブブリアン……」

鈴凛は思わずそれが口をついてでた。

影姫を思い出してまた悲しくなる。

「おーあんた日本人やったなあ。わいブブリアン好きで日本に最初移住してん」

「え……そうなの?」

どうでもいい情報でもあり、なんでそんなことのために住む国を変えるのかという信じられない情報でもある。

「……ウホ」

ティーシャツをぬぐと、ぴょんと小さくなったアルマが猫のようにジャンプしてLJの腕の中へ飛び込んだ。

「お」

くんくんと胸の匂いをかいでアルマは幸せそうな顔をしていた。

「ラムジーの施設でアルマの世話をしてたのね」

「せや口止めされてたけどな」

「それで喋り方が似ているんですね」

青蛾が言った。

「なんかでも元気ないなあ……ふにゃふにゃしとるし」

「確かに……どんどん小さくなってますね」

青蛾も心配そうに言った。

「そろそろ地上に出ないといけないわ」

ヴァレリが起き上がって言った。

「?」

「アルマのためよ。この子は生死原理の記号化された帰納的集合との結びつきが強い。このモールに長くいることがストレスなのよ」

−−上昇しますか

ヴァレリの僕のひとりが言った。

「ええお願い」

−−はい、ヴァレリお嬢様!!

鯆多丸を含めた男たちが合唱する。

「……」

地底戦車はしばらく上昇していった。

「これほんまに上にいってんか?わからへんな」

LJが膝にアルマをのせてふわふわの背中をなでていた。

「だから言ったでしょ?これは現代科学を凌駕する技術なのよ。あんたのみょうちくりんなかき氷マシンと一緒にしないでよね」

「てかわいのマシンみたんか」

「身元調査もせずにモールにのせたりなんかしない」

「けったいやなあ」

「あんたは馬鹿で無害なエセ関西人よ」

「……」

ヴァレリがこう言うのだから、LJはやはり鬼族の構成員というわけではなさそうだった。

−−もうすぐ地表にでます!!

ものの5分もたたないうちに、乗組員たちが声をあげた。

外に出ると明るい開けた場所だった。

「……なんや……」

LJが顔をしかめる。

臭い。

赤黒い煙が、夜明け前の空をゆっくりと覆っていた。


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