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八百万の果て  作者: 三雲にに
真偽ノ甘噛(世界編)
208/214

67話 ソラリス研究所

アルマはもちろん、ヴァレリが三メートルはあろう穴から落下して無事に着地したことには驚いた。

「ここ……ラムジーさんの畑って、ここはどう見ても−−」

白い廊下が続いている。

研究所か何か近代的な秘密の施設だった。

「青蛾を助けなきゃ、こんな地下で騒ぎをおこしたら、青蛾を助けにいけるかどうなるか……」

「今更おじけずいたわけ?」

ヴァレリが機械をいじりながら言った。

「ちがう。こんな場所に入ったら簡単には助けに行けない」

「あの子ならもう助けてモウルに乗せてあるわ」

「え?」

あのモグリンのような地面に潜るマシンはモウルというらしかった。

「薬ものませて回復にむかってる」

「え?……って仲間がいたの?」

「ええ」

「ヴ」

アルマが小さく唸る。

「そうね、いまそんなこと話してる場合じゃない。いくわよ」

鈴凛もはっとする。

三人は小走りでヴァレリの案内で進んだ。

上にはあんなに武装した連中がいたのに、ここには見張りがいない。みつからないことを前提としている施設のようだった。

「……!」

誰かが近づいてくる気配があり、鈴凛たちはそばにあった扉にさっと入る。

白衣を着た研究者たちが雑談をしながら過ぎていった。

「ここは何なの」

「ソラリス研究所よ」

「ソラリス?」

「太陽光を衛星軌道上にあるパネルへ集中させ地表へ当てる」

「世界のどこにいても」

「世界の……どこにいても……?」

鈴凛はその響きにぞっとした。

「問題は当てる対象者をどうやって探し出すかよ」

「それって……」

「そうわたしの能力が適当よね」

「……!」

「でも違った」

「……?」

「わたしのは暗号化されたオンライン上の情報を理解できるってだけ」

「通信手段を完全に遮断した洞穴にいればみつからない」

「でもこれが完成したらそうはいかない」

「どういうこと?」

「やつらが実装しようとしているのは、わたしじゃなく、完璧な視力」

「視力?」

「どこに隠れても探し出せる力」

「それは」

「!!」

「視力を飛ばす力」

「それって……」

鈴凛は心臓がびくりとした。

「そう。拘式翔嶺の能力よ」

「!……千里眼−−」

鈴凛は随分久しぶりにその言葉を口にした気がした。

「陽族は……翔嶺くんを捕まえようとしてるの?」

鈴凛は複雑な心境だった。

あの街でのことは、八咫烏だった彼が陽族を欺いたことからはじまった。

宇多の町でのことや、伊勢神宮の決戦のことが思い出される。

「翔嶺くん……」

「おそらく、今、あの男は連結点を頂いた事件以来、拘式神嶺たちと行動をともにしているわ」

ヴァレリが進みながら言った。

「え……?」

鈴凛は翔嶺をあの男などと呼ぶことに抵抗があった。

彼は今、鬼族側で何をしているんだろうか—

20年経った今、きっともう少年じゃない。

「パリの一件以来、オブシディアンたちがわたしの動きを読んでいる節がある」

「……!」

「きっとあの男の能力よ。わたしの居場所を先に知っており、連結点とオブシディアンを先に逃がしている」

翔嶺は未来妃たちと一緒にいるのか−−。

ヴァレリが未来妃に接触できないでいるのもこれが理由らしかった。

「この能力を逃げるために使うならいいけど」

「これを攻撃に使うにはどうすると思う」

「!」

「これが完成したらどうなると思う」

ヴァレリが冷たい声でいった。

鈴凛にもそれがすぐにわかった。

「!」

「殺したい奴をすぐにボタンひとつで消せるのよ」


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