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八百万の果て  作者: 三雲にに
真偽ノ甘噛(世界編)
202/213

61話 獣姫

「なん……」

鈴凛はあたりを見回した。

どこにもいない。でも近くにる。

神経を研ぎ澄ます。

こちらの様子を伺っているのだ。

「!」

麻酔銃を構える。

「どこ……」

鈴凛はジャングルの闇を睨んだ。

いや、あれは何だったんだろう?

人?

獣?

猿?

忌?

黒っぽい顔はびっしりと毛が覆われており、瞳は豹のように金色だった。

匂いは忌に近かった気がする。

やはり忌だろうか。もしくは発症前の目隠し者。

「−−!」

後ろから気配が—と思った時にはもう遅かった。

手が弾かれ、麻酔銃を失う。

「!?」

しまった。

後ろから飛び出してきた獣は信じられない速度で、身をくねらせ方向転換すると、鈴凛に飛びつこうと両手を広げて覆い被さる。

「あ!!」

首を押さえつけられる。信じられない力だ。

どちゃりと、泥に叩きるけられる。

金色の目が爛々とこちらをみていた。口の中には牙がみえる。

「イノチ」

唸るような声で獣が言葉を発した。

しゃべれることに鈴凛は驚いた。

「……!」

そして驚いたことに低い声が漏れた。しかもおそらく女の声だった。

「……え?」

「イノチ」

また同じように言った。

じいっと瞬きもせず見つめたまま獣女はそう言った。

鈴凛は馬乗りにならたまま、けむくじゃらのかを見つめてそういうことしかできなかった。

額の上のほうに2本の捻り上がった角が生えている。


雨狼と同じ—


「イノチノニオイ」

鼻さきを近づけて、獣女は鈴凛の額の匂いをかいだ。

「!……命の……匂い?」

日本語だ。

鈴凛は驚いた。

「あなたは……だれ?」

獣女ははじめて瞬いた。

「イノチ」

「え……」

力が緩む。

「!」

獣女は鈴凛をはなすと、四つ足の獣のように後ずさる。

「!」

彼女の背中にはタテガミのようなものがあり、その毛がぶるんぶるんと震えた。

「!」

すると顔の毛がどんどんなくなっていく。

黒いなめらかに光肌に黄色くちぢれた髪、はっきりとした黒人風の顔立ちが見てとれた。

「ワイは、アルマ」


ワイ?


「!!?」

その時後ろで気配がした。

「だめ!!」

凄まじい銃撃音が鳴り響く。


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