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八百万の果て  作者: 三雲にに
真偽ノ甘噛(世界編)
199/216

58話 顔色

「……なんだか、落ち着きませんね」

青蛾がフォークを置きながら朝食の時に言った。

部屋にはアフリカの朝日が入ってきている。

「ん」

鈴凛はスクランブルエッグをかきこんで顔をあげた。

ラムジーの部下の男たちはずっと鈴凛たちを見ていた。いや、正確にはラムジーが影響力をもつこのエリアの誰か支配者の部下たちだろう。

AKをさげたまま、鈴凛たちがヨーグルトにマンゴーソースをかける時まで、寸分も見逃さないように見張っている。

「……」

もはやマンゴーの味もよくわからない。

あれからラムジーは一度も顔をみせていなかった。

もう二日も経過していた。

「あの、ラムジーさんっていつ来られそうです?」

そばにきて、グラスにオレンジジュースを注ぐ男性に聞いてみた。

「……」

話しかけた男はふいっと言葉は通じない、といった顔をして去っていく。

「……」

青蛾もだめですね、といった感じで肩をすくめた。

他の男たちはじいっとこちらを見ている。

昨日の昼間、鈴凛が屋外に出た時も、男たちは不親切だった。

AKをさげた青年にここはどこかを聞くと、彼は不機嫌そうな顔をした。

−−ここにはくるな言うてんねん!

車庫あたりでLJが遠くから叫んだ。

少年兵は子どもらしくない顔つきでずっと鈴凛を睨んでいた。

「……」

ラムジーはくつろぐように言ってきたが、この豪華な屋敷の中にいても、まったく気が休まらない。

男たちがじいっと見てくるのでぴりぴりとしていた。

リリは席から立ち上がると、窓からアフリカの平原を見渡した。

この場所は明らかに街から離れているようだった。

「監禁されてる」

この状況は端的に言って、監禁されているだけだった。

「……そうかもしれませんね」

青蛾が困ったように言う。

スマートフォンもなければテレビもラジオもない。外で何がどうなっているのかさっぱりわからなかった。

「……申し訳ありません、わたしを連れているから百姫様に自由がきかず」

青蛾が歩いてそばにやってきてそう言った。

何もできない自分が悔しい。

今までは八咫烏の誰かが何とかしてくれた。

その誰かは誰もいない。

自力で哀に出会えるだろうか。信用できるのは哀くらいだ。

「うんう。青蛾のせいじゃない。どう動いていいかさえも、わたしまだわかってない」

「あ……そういえばわたし本棚で地図をみつけました」

青蛾が戸棚から本を渡す。

男たちは動かずじいっと目だけでその動きを追っていた。

言葉はわかっていない。

「アフリカの地図だね」

ざっくりとしたアフリカ大陸が描かれていた。

ただうろ覚えで、南アフリカやエジプトはわりと西側諸国に近いような経済発展をしていたはずである。

もしここを脱出するのなら、そこまで辿り着けば何とかなるかもしれない。

ただどれくらい距離があるのかも覚えてなかったし、上には砂漠地帯があり、南も治安がよさそうな国ではない。青蛾を連れて突破するのは困難を極めそうだった。

「元気ないやんか」

「軟禁されてる」

鈴凛が不満気に言ったら、LJはめをくるりとやってやれやれといった顔をした。

「今頃気がついたんか」

「……悪かったわね」

これは上からの命令なのか?それとも自分たちが有利に何かをすすめるためか?

鈴凛は答えのない憶測を色々と考えていた。

「あなたもここから出られないんですか?」

青蛾がLJにきいた。

「そりゃもう、何度も脱走を試みて、えらいめにあったで」

「はあ……」

鈴凛は項垂れる。高天原から脱走したのに、またここからまた脱走しなければいけなさそうである。

勢いで降りてきたのの、あまりの大変さにめまいがする。

こんな状況で哀に会えるだろうか?

今更青蛾を連れてきてしまったことを後悔する。

自分だけだったらおそらく、もうここを出ていただろう。

「大丈夫か?」

青蛾も疲れたのかソファに座り込んだ。

「少し疲れたのかもしれません」

「……?……顔色が……」

青蛾の頬が赤い。

「なんだか……とても寒いです」

「え?」

「おまえらは旅行者か?」

LJが青蛾のほてった顔をみてをしかめた。

「あかんマラリアかもしれん」


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