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八百万の果て  作者: 三雲にに
真偽ノ甘噛(世界編)
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52話 五十塔の襲撃

「囲まれてる」

鈴凛がしたをみると、うようよと白麗衆が五十棟のまわりに集まっていた。

「玄武様、いけませんね。声をかいくぐって白麗衆を乗っ取るなんて」

「俺たちはでていく」

「その箱を破壊してください」

「はやく箱に入れ!!」

白麗衆がどっと押し寄せて、みなに襲いかかる。

牛満が虎頭と青蛾の前に立って、木材をぶんぶん回していた。

「くいとめとく!かまわずいけ!!」

エレベーターの箱の扉を虎頭と青蛾がこじあけていた。

「はやく!」

鈴凛が白麗衆を命令している真緒をどうにかおさえようとした時、別のものが五十棟の壁を破壊してつっこんできて、鈴凛は吹き飛ばされる。

「っつ!」

「あなたを押さえつけられなかった時のため、新兵器持ってきていたんですよ」

煙の中にたつ誰かがみえて、声がした。

法衣の長虫がフェイスをつけて立っていた。

「!?」

鈴凛に誰か馬乗りなって押さえつけてくる。

不気味な機械音がして、鈴凛は慌てて飛び退いた。

「!!」

回転する刃がすぐほほのそばをかすめる。

避けたと思ったのに、回し蹴りで鈴凛は足を救われるとすっ転げた。

「!」

襲撃者がまた

ぎりぎりと鈴凛を押さえつけて、銀色の回転する凶器を振りかざしていた。

籠を被った女—

「!?」

鈴凛はそれが誰か判る。

「咲−−」

奪われた右手には回転する円盤ののこぎり刃がついており、失った足にはスプリングのようなものがあてがわれていた。

「!」

籠の中、額の部分から小さな原石のようなものがちらりと輝いた。

「咲−−」

胸が締め付けられる。

「どうです新兵器は強いでしょう?」

長虫が笑いながら言った。

「照日ノ君に目をかけられているからと、何をしても許されるとでも?」

「忌も戦姫も、人工的に作れる時代はもうすぐそこなのです」

「!」

「咲、やめ−−」

ものすごい力だった。

後では白麗衆たちが次々とエレベーターの箱を破壊していた。

「あなたはもう必要ない」

喉元にノコギリの歯がせまっていた。

「おやめなさい!!」

しゃがれた声が響き渡る。

咲の動きが止まる。

扇町の五十の塔の前に現れたのは、車椅子にのった鯨山と、それを押す末兎だった。

「わしが話す」

「……」

長虫がにがにがしげに小さくうなづくと、咲が人間の手で鈴凛の頭を押さえつけた。

「百姫様」

「鯨、山さん」

「百姫様、この鬼に堕ちた者たちの言葉に耳をかしてはなりません」

老婆はしゃがれた声で強くはっきりと言った。

「……!」

「このような箱で高天原を脱走しようなど正気の沙汰ではございますまい」

「……」

「玄武様、百姫様を巻き込むとは卑怯ですぞ」

「け、おまえに言われたきゃねえよ」

「ここからこのような箱で下界に降りれるわけがありあますまい」

「……」

「よいですか」

「!」

「わたくしが全てをなかったことにいたします」

鯨山がはっきりとそう言って目を閉じた。

「……」

「みなそれぞれのあるべき場所へ戻るのです」

「鯨山様、」

青蛾が悔しそうな顔をしていた。

みんなが縄で縛られて連れていかれそうになる。

「でも白麗衆は−−」

鈴凛は望姫と久夜の白麗衆をみた。

そこには何の感情もない死んだ表情がった。

「白麗衆は望姫だった、久夜だった」

「田心姫様は−−」

車椅子の鯨山がそれ以上何も言うなというような慧眼でこちらをみやる。

「……」

末兎はただ悔しそうに顔を背けた。

「はじめから……すべてを知っていたのね……」

鯨山は田心姫の華子だった。

白麗衆は神宮で神々の仕事に携わる。神宮の頂点である宮司が知らないはずがない。

「百姫様」

鯨山がシワシワの唇からしゃがれた声をだす。

「知っていたならどうして」

久夜は、望姫は、本当はいったいなぜ白麗衆にされねばならなかったのだろう。

「どうか百姫様」

末兎は息をつまらせた。

「−−知らないほうがよいこともあるのです」

末兎はどこか自分に言い聞かせるように言った。

「……!」

「貴方様は苦労して築き上げた全てを、棒に振ろうとしています」

鯨山が鈴凛をじっとみた。

「全てを失いますよ」

「……!」

全てを失う。

戦姫としての立場、いままでの苦労。その全てが消える−−

その言葉で、鈴凛はたまらなく怖くなった。

高天原を追放されるかもしれない。

「どうかおしずまりください」

「……」

肩の力が抜けていく。

「今宵はなにごともなかったのです」

「それが貴方様のため、みなのためなのです、羊杏がいる百の宮にお戻りください」

「なにごとも……なかった……」

「鞘指輪です」

鯨山がそう言うと、末兎が箱を持って歩いてくる。

「!」

鈴凛はそれを咲からの腕の移植のためか外されていた。

「……あなた様はこれまで通り、立派な戦姫です」

末兎があゆみより、鈴凛の手をとった。

鈴凛はびくりとして指輪をみた。

「……なにごともなかったように……?」

その言葉が腹に落ちていく。

それは鈴凛の一番深い場所まで落ちる前に、猛烈な怒りで沸きあがり戻ってきた。

「そんなこと」

指輪を払いのける。

「なにごともなかったなんて!!」

誰かの死をなにごともなかったかのように過ごすなんて間違ってる。

「そんな−−」

次の瞬間、後頭部を思い切り殴られる。

「!!」

鈴凛は前のめりで倒れた。視界が揺れる。

真緒がボウガンをぽんっと手に持ってにこりと笑った。

「鯨山様、この人はバカですから説得しようなんて無理ですよ?」

真緒が呆れてため息をついた。

「……始末しなさい」

鯨山がそう言うと、長虫がにやりとした。

咲の回転するブレードが飛んでくる。

「百姫様にはもっと戦っていただきたかったのに、残念です」

鈴凛はよろよろと立ち上がった。

長虫が咲を使って、次々と攻撃してくる。

「く!!」

なんとか攻撃をよけて、逃げる。

「明も鞘指輪もなしでどう戦うというのです?」

長虫が笑っていた。

すぐに咲に捕まった。

「終わりですね」

「!」

機械音が近づいて、回転する刃が目の前にあった。

「さようなら、百姫様」

長虫がフェイスの下で笑っていた。

鈴凛はその瞬間、色々なことが頭をかけめぐった。

20年前、炎の中に鈴凛を突き落とした咲の顔が思い出される。

咲に今、意識はない。

それなのに、運命はなんと意地悪なのだろう。

鈴凛を殺す役目は、やっぱり咲なのだ、と謎の確信に変わる。

「末兎!何をする」

その時、あわてた長虫の声がした。

「百姫様を、死なせるわけにはいきません!!」

驚いたことに、末兎が動揺しながらも必死に長虫に掴みかかっていた。

「ええい邪魔だ!!」

その瞬間、フェイスがとれた。

そしていつもしていた顔の覆いも一緒にとれた。

「!!?」

鈴凛は信じられないものを見る。

その顔には見覚えがあった。

「ぎ−−……?!」

顔が傷だらけだったものの、それが誰かわかる。

影姫の元花将、技蛇だった。

「技蛇」


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