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永遠(TOWA)  作者: 三雲
真偽ノ甘噛(世界編)
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49話 泥の船2

「ど……どういうことなの……」

鈴凛はなにもかも理解が追いつかなかった。

「ジゼル……望姫がどうしてここに」

なぜ生きている? なぜ白麗衆に?

「なんで……」

「白麗衆は田心姫様が……」

鈴凛は何も言えなくなった。

「こ、これは何かの間違いだ……これは何かの間違いだよ……」

鈴凛は必死に頭を働かせる。

「そうだ。思金様がクローンを作ったのね、でも……それがじゃあなんで白麗衆に」

「これは俺の『かん』だが、こいつはおそらく本物—オリジナルだ」

蛇が苦々しげに言った。

「本物……? 本物なわけがない」

本物は20年以上も前に死んだはずだ。

周馬に殺されたんじゃなかったのか−−?


頭がクラクラする。明が欲しい。

何もかもが崩れていく気がする。

信じたくない。

ずっと信じていたものは、この20年はいったい何だったのか……


「おまえ白麗衆がどうやってつくられるか知ってるか?」

青蛾にかかえられた蛇が低い声で言った。

「それ……は」

鈴凛は深く考えてもみなかった。高天原には不思議なことばかりで満ちている。ひとつひとつをなんでか?なんて考えることはもうずいぶんまえにやめていた。

「死んだ連中を、聖灰で還らせないように、生かし続けるのさ」

「……還らせない……?」

鈴凛は底なしの恐怖とともに理解が追いつかなかった。

「田心姫の聖灰の真価はそれだ。あの女の能力はまさに化け物」

「……まさか」

「あの女は死んだ美しい女をゾンビにして、コレクションしてやがるのさ」

ベスがいつの間にかそばにやってきてそう言った。

「白麗衆は全て若く美しい。ババアの腰が曲がった白麗衆なんていやしない。この意味がわかるか?」

鈴凛はますますぞっとした。

「その幾人かは老いる前に殺されてる」

「そんな−−」

「おまえが見ている世界はまやかしだ」

虎頭の美しく手入れされた庭の水路を流れる水だけがちょろちょろと音をたてていた。

今日も美しい高天原がそこにあった。

「何もかもが……? た、田心姫様が−−……」

鈴凛はいつも優しく楽しく接してくれた田心姫の記憶が巡る。

「嘘だ、あんたがまた嘘をついて……そんなわけない……田心姫様は最強で美くしくて、妹姫たちを想って……田心姫様がそんなこと」

「おまえにみせている側面がそいつの全部だと?」

蛇が鼻で笑う。

「そ……」

「こいつらの顔みんな白いだろ? 聖灰がこんな風に、身体中の細胞の死を止め、肉体だけを生かし続けるのさ」

「な……んでそんな」

「変態の心理は理解できんが……、おそらく美しいからこそ保存したいんじゃねえのか?もしくは遺伝子を永遠に劣化せず保存しておくっていう思金との共謀か」

「!」

鈴凛ははっとする。

湍津姫が死んだ後、田心姫がしようとした行為を思い出す。腕の灰を湍津姫へ入れていた。

あれは助けようとしたのではない−−

死んだ戦姫を……大好きな妹を保存するため−−

「そんな……」

鈴凛はへたりこんだ。

「でも妹を助けたくて……」

「へえ?こんな風にするのが?」

ベスがジゼルをみやる。

その目は白く濁り死んだ魚そのもので、表情も何もなかった。

目の前のジゼルは命令で動かせはするものの、明らかな意思のない死体だった。

「妹をそのまま死なせた方が優しいのか、優しくないのかは知ったこっちゃない。ただ、こんなゾンビ女を量産してること自体、キモい。キモイことには違いない。だろ?」

ベスが肩をすくめた。

「……」

鈴凛は何も考えたくなかった。

もっと知りたくもない何かの入り口に足を突っ込んでいる気がする。


自分が必死に守ってきたものは何だったのか−−


鈴凛は愕然とした。

ここは一体—

いやいままで信じてきたものは何だったのだろう。

これが本当にジゼルなら


陽族は−−

照日ノ君は−−……

「照日ノ君は……」

−−こんな時間に検非違使が通達をだしてるって

通りが騒がしくなってきた。

「悪いが時間がねえ。ここには長居できそうもない」

「!」

「真緒が街までおまえの捜索範囲を広げてんだ」

「いきましょう」

白虎が青龍を咥えてやってくる。

「いくってどこへ」

「湍津姫様の道です」

虎頭が台所で声をあげた。

「急ぎましょう」

「……」

台所の扉に戻ると、次々に火鼠の灯りを持って、虎頭たちが入っていく。

「ここともお別れかもしれませんね」

名残惜しそうに虎頭が店を眺めた後に言った。

「……」

再び穴の道に入る。

「いくぞ」

くらい道を連なって進む。

しばらくいくと、開けた洞窟が現れる。無数の箱が散らばっており、白い影が無数に動き回っている。上の方には木でできた建物の骨組みがみえ、外の光がわずかに漏れている。

「!」

鈴凛は何かが動き回っているのが見えた。

「こ、ここにもまだ白麗衆?!」

「田心姫は今地上だ。何人か宮に戻ってないところでばれやしない」

十人ほどの白麗衆たちは箱に何かをせっせと塗っていた。

鈴凛はそのうちのひとりの白麗衆が目についた。

「……」

鈴凛は近寄ると、ハケを無心で上下する彼女のおおいをとった。

「……久夜−−」

少しだけ予想していたものの、胸が締め付けられた。

五橋から身を投げて死んだとされた、かつての花街一の花魁が老いることなく保存されていた。

「……」

久夜は鈴凛に気にもとめず、作業を続けている。

哀たちと店で大騒ぎしていた時の表情豊かなな久夜はもうどこにもいなかった。

「悪いが労働力が必要だったんでな」

玄武は勝手に白麗衆を使っているようだった。

「これ……」

鈴凛はそれが元何だったかわかった。

「エレベーターの箱……」

湍津姫が生きていた時は、鈴凛がかつて何度も使ったものだった。

「に何に塗って……」

「泥だよ、泥」

「泥の船の泥でございます」

かつて水に浮かべても溶けないと言っていたあの泥らしかった。

「今高天原の宇宙空間。大気圏を突破するには、燃え尽きないようにしとかないといけないだろ」

「!」

「もう十分だろ」

「ちょ……ちょっと待って。もしかして、脱獄って今からなの?」

鈴凛はあまりに計画が最終段階に入っていることに衝撃をうける。

今からこの箱で地球へ落下しようというのだろうか。

「よかったな。完成のタイミングとずれてたら、おまえはここに置いてけぼりだった」




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