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第十一話  迫る恐怖

 地獄のような生理が終わり俺の体はいつもの調子を取り戻した、一日で終わるものだと甘く考えてた俺はあれから更に四日程苦しんだ。

 お袋に助けを求めるも使い捨てカイロと成分の半分が優しさで出来ている鎮痛剤を手渡されただけだったが、これが意外と効果的だったみたいで少しは楽になった。


 学校ではなるべく表に出さないようにした、特に勇吾の前では平然を装う為に頑張っていたが見えてない所は冷や汗ダラダラだった。

 この前まで男だったのにいきなり女の子になり、そして生理にまでなったと話したら勇吾だって困惑するだろうし。


 まず男に戻れれば話す必要も無くなるし今日の帰りは神様のとこに寄らないとな。

 ここ二、三日は神社には行って無かった、生理痛で億劫ってのもあるけど全て見透かされてる相手に会う気が起きなかった。


 それこそ何を言われるか分かったもんじゃないし、勇吾に話されでもしたら俺は短い人生に幕を閉じかねないだろう…。




 「歩~、勇吾来てるから早くしなさい!」


 うえっ、もうそんな時間か。こっちはまだパジャマのままなのに、早く着替えないとまたお袋に怒られてしまう!

 俺は急いで準備をして玄関で待つ勇吾に声を掛けた。


 「遅くなってすまん!」

 『ゴスッ!!』

 「あいでっ!」

 「すまん、じゃないでしょ、『いつもお待たせしてごめんなさい』でしょ!」


 俺がいつもの挨拶をすると頭上からお袋のゲンコツが落ちてきた、不意打ちをくらったせいで目からお星様が飛んでいった。


 「俺は大丈夫ですから。それよりおばさん、歩は女の子なんですから暴力はダメですよ。」

 「この子は何回言ってもダメだからこれ位が丁度いいのよ。」

 「だからってゲンコツはないだろ、暴力反対!」


 デモ隊の如く抗議をするも、お袋の鋭い眼光により俺は小さくなり直ぐ様一人デモ隊は解散になった。


 「勇吾君、女の子は甘やかすだけじゃダメなの。叱ってやる事も必要なんだからね。」

 「俺は犬かよ…。」

 「歩っ、言葉使いに気を付けなさってこの前も言ったでしょ?」

 「ひいぃ、い、行ってきます!」


 つい出てしまった男言葉にお袋は二発目の拳を振り上げてきたので、俺は咄嗟に頭を抑え逃げるように家を飛び出して行った。





 「ったく、朝から酷い目にあったな。」

 「頭大丈夫か?」

 「えっ、うん、まぁね。てかそこは笑うとこだろ?」

 「結構鈍い音したからな、期末テストも近いし覚えのたの飛んだらヤバいだろ。」


 あっ…、期末テストの事すっかり忘れてた、最近みんな熱心に勉強してたのはそのせいか。

 確かにヤバいな、赤点なんか取ったら冬休みに補習しなきゃならないし、そうなったら休みが無くなってしまう。


 もちろん一学期の期末テストは八割赤点で夏休みなんか全く無かった…。




 「ちなみにテストいつからだっけ?」

 「昨日の帰りに先生話してだろ、聞いてなかったのか?」

 「うん、早く帰ってアイス食べたかったからそれどころじゃなかったんだ!」

 「全く歩はホントにアイスが好きなんだな。」

 「だって色んなフレーバーがあって沢山のテイストを楽しめるのはアイスと言う食べ物だけなんだぞ!」

 「そうかそうか、熱弁した所悪いがテストは来週からだぞ。」


 折角アイスと言う素晴らしい存在の説明をしてやったのに一気に現実に戻しやがった。

 でも今はアイスも大事だがテストも大事だ。


 「ヤバい、ヤバい、これはヤバいぞっ!」

 「確かにそうだな。」

 「夏休みは補習漬けで休みなんか全然無かったし、冬休みもそうだとしたら俺は…、死んでしまう!」

 「そっちかよ、てっきり内申点の事かと思ったのに。それに流石に赤点はもう無いだろ、武志君と姉貴に勉強教わってるんだからさ。」


 確かに俺の兄貴と藤崎家兄弟、この三人に勉強を教わっているから間違いは無い筈。

 この前の小テストは半分迄しか解けなかったが、解いた所は全て正解していた、しかしいまだに実感が無い。


 「期末テストの内容ってそんに内申点に響くのか?」

 「多分な、まだ二学期だけど点数悪ければ進学先変えられるかもしれないしな。」

 「そうなったら俺の今までの苦労が水の泡に…。」

 「今の歩なら大丈夫だろ、俺の目から見ても大分成績上がった気がするけどな。やっぱりやれば出来る子だったな。」

 「う、うん。でもなんか違うんだよな。」


 俺だって昔は勉強くらいしてた、けど何度復習しても全く頭に入らなかった。

 集中してないからだ。と言われればそれまでだけど、合わないピースを無理矢理嵌めたパズルみたいにテストの時はいつも頭の中はグチャグチャだった。


 それが女の子になってからは勉強すれば直ぐに理解出来るようになったし、問題を見ると直ぐに答えが閃くようにもなった。

 男と女で頭の作りが違うのかな?それとも感謝はしたくないけど神様のお陰か?


 「でもまだ一週間あるし、この調子で行けば良い点取れるんじゃないか?」

 「まだ?もうだろ?ヤバいよ、ヤバいよ!空き時間は全部勉強に当てないと!」

 「落ち着けって、あんまり頑張り過ぎても逆効果だぞ。ちゃんと息抜きしながらだな…。」

 「そんな悠長な事言ってられないんだよ!折角の冬休みを学校で過ごすなんてもう勘弁だ!」


 俺はやれば出来る子だ!そうと決まったらゆっくり歩いて登校なんてしていられない、学校までダッシュで行って授業が始まるまで勉強しなくちゃ!


 「勇吾?」

 「どした?」

 「学校まで走っていくぞ!」

 「は?何で?」

 「今は一分一秒でも惜しいんだ、早く学校行って勉強する!」

 「おい、ちょっと待てよ!」


 俺はそこまで告げると勇吾の静止も聞かず走り出した、この即決断即行動こそが実になって明日の俺への糧となる…、ってなんか俺ってちょっとカッコイイかもぉ!





 待ち伏せするように隠れているサラリーマンを横目に俺は構わず走り続けた。


 「今はあんたに構ってられないんだ、早く会社行って仕事しろ。」


 後ろから勇吾も慌てて追いかけて来ているが、やる気に満ちたこの俺に追い付けるかな?












 ー五分後ー


 「はぁ、はぁ、もうダメにゃ。今日は、が、学校が遠い、移転でもしたか?」

 「いや、変わってないぞ。」

 「こんなにはひったのにまだつかにゃい。ま、まさか同じ所をグルグルと…。」

 「そんな訳無い、朝から怪談話かよ。そもそもあんなにダッシュしたら持つ筈無いだろ。」


 クソッ、体力が無いのを計算に入れてなかった。

 俺の予定では学校に早く着いて、図書館とか頭の良い人達御用達の秀才の聖地で優雅に勉強するつもりだったのに。


 「もう終わった、俺はこのまま勉強も出来ず冬休みを一人寂しく学校で過ごすハメになるんだ…。」

 「いきなり走り出したかと思えば今度は腐り始めたし。全く大袈裟だな、今の歩なら大丈夫だって。」

 「う"~ん、いまいち自分じゃ実感が湧かないから不安なんだよ。」

 「じゃあ俺が問題集作ってやるから、それで良い点取れたら少しは自信がつくんじゃないか?」


 確かに勇吾が作る問題集を解く事が出来れば自分に自信が持てるかも。

 けど…。


 「そこまでしてくれるのは嬉しいけど、俺の為に時間割いてたら勇吾は何時勉強するんだよ!」

 「歩の為に作った問題集を俺もやれば同じ事だろ?こういうのは自分でも分かってないと作れないからな。」

 「それはそうだけど、頼んでもいいのか?」

 「任せろ、今日中に作って歩ん家に持ってくから覚悟しておけよ。」

 「よろしくお願いします。」


 なんて頼りになる親友なんだ!後光が差し神々しく見える勇吾に俺は深々と頭を下げた。

 しかし年上なら分かるけど、同級生相手に問題集を作るなんて勇吾の頭の中はどんな構造になってんだ?






 朝から無駄に走り休憩したせいで余計学校に着くのが遅くなってしまった。

 教室に入るとクラスメイトの半分以上は黙々と勉強していて重苦しい空気に包まれていた。

 その中で唯一、一人だけが重苦しい空気とは関係無く暖気にマンガを読んでいた。


 その唯一の存在は俺に気付くといつも通りヘラヘラしながらやってきて、これまた暖気な挨拶をしてきた。


 「おはよう歩ちゃん!今日も可愛いね!そろそろ俺と付き合う気になった?」

 「おはよう、黒川君はいつも元気だね~。」


 俺は黒川の言った事は華麗にスルーして少し嫌味っぽく言ってみた。


 「だろ?こんな健康で逞しい俺に惚れちゃった?」

 「あははは、黒川君朝から面白いね。」

 「やっぱり一緒に居て楽しい相手じゃないと!俺だったら悲しませるような事しないからさ!」


 こいつどんな返し方しても絶対そっちに話戻してくるな、馬鹿だけどある意味凄いな。 


 「言っとくけど俺だって悲しませた事無いからな、それにみんな勉強してんだから静かにしろよ。」

 「俺は別に騒いでないぞ、歩ちゃんと朝の癒しの一時を過ごしてるだけだ!そうだよね歩ちゃん?」

 「ま、まぁね。あっ私も勉強するからごめんね。」


 黒川から逃げる口実として俺も勉強する事にした、実際この重苦しい空気の中で騒ぐ気にもなれないし黒川を近くに寄らせたくもなかった 。


 勉強する為に教科書を出し始めると直ぐに担任がやって来た、少しでも勉強したかったが学校に着くのが遅かったので仕方がなく教科書を片付けた。


 担任の先生はテストの事や、内申点がどれだけ大事かをこれでもかと永遠と話続けた。

 長々と話をされみんな辟易し始めた頃、先生の話を割って黒川が口を開いた。


 「要は頑張れって事だろ先生、みんな朝から勉強して頑張ってるし大丈夫だって!」


 このクラスメイトの頑張りを信頼しての発言だと思うが、発言した奴が悪かった。

 さっきまで暖気にマンガを読んでたくせに何を偉そうな事言ってんだよ。


 俺以外にも同じ事を思った人は大勢居たみたいで黒川に視線が集まるも、当の本人は全く気付く様子は無なかった。


 「テストが終われば直ぐ冬休みに入るが、休みだからって遊んでる訳にはいかないからな。これから先はみんなの将来を決める大事な…。」


 黒川が口を挟むも先生はまた話し出し教室のあちこちから小さい溜め息が聞こえてきた。

 同じ話を何度も聞かされるより勉強してた方が余程有意義ってもんなのに、先生ってのは全く分かってないよな。


 「じゃあみんな分かったな、一日一日を大事に過ごすんだぞ。」


 ようやく終わった、なんで先生という生き物はこんなに話が長いんだろうね。

 一時間目は体育なのに準備する時間が無いじゃないか。






 案の定体育の先生に集まりが悪いと怒られ、特に一番最後に来た俺は長々と説教された。

 女子更衣室を使わず人気の無いトイレまで行って着替えてる俺はやっぱり合流が遅くなる、先生はそんな事は知る筈もなく遠慮無く説教が続いた。


 やっと解放される頃には運動するよりも疲弊して最早動く気にはなれなかった。

 バレーのローテーション待ちで休憩してると勇吾が声をかけてきた。


 「今日の説教も長かったな、それにしてもなんで着替えに更衣室使わないんだよ。」

 「だって…。」

 「逆に怪しく思われるんだから普通に使えばいいだろ?」

 「そんな事言ってもみんな下着姿だし、流石に遠慮しちゃうよ。」


 男だった時は女子更衣室なんて興味の塊だったが、いざ女の子になって更衣室に入る事になると話は別だ。

 良心が咎めるというか、遠慮したくなるというか入る勇気が出なかった。


 「はぁ…、気持ちは分かるけど今は女の子なんだから遠慮する必要無いんだぞ。」

 「それはそうだけど、出来る事なら男子更衣室の方を使いたいよ。」

 「そっちの方がダメに決まってんだろ!男共に見られるだろうが!」

 「俺には見慣れた光景だから遠慮しなくて済むんだけどな。」

 「歩が遠慮しなくても男共が遠慮するし、変な事になったら大変だぞ。とにかく次からは女子の更衣室使えよ、いいな?」


 変な事ってなんだよ、そもそも何でそんなに女子更衣室を使わせようとするんだよ。

 

 「まさか俺を使って良からぬ事を考えてる訳じゃないよな?俺は犯罪に加担しないからな!」

 「そう来たか!俺だって興味が無い訳じゃないけど、歩が怒られるのを見てるのが辛いからな。」

 「な、なんだよいきなり、怒られるのは昔からだろ!」

 「それはそうだけど女の子が怒られてる姿は見てて気持ちの良いもんじゃないからな。」


 結局はそれか、俺の事を心配してるように見せて実はからかってたのか。

 先生に怒られ勇吾にはからかわれて、沸々と怒りが込み上げてきた俺は勇吾に掴み掛かった。

 その瞬間ー。


 『シュッ。』


 俺と勇吾の間に勢いよくバレーボールが割って入ってきて、二人とも何の事か分からず目が点になってしまった。

 コートの方を向くと女子達はみんなこちらを睨むように見ていた。


 「コラァァッー、歩!体育の時間までイチャついてんじゃねえっつの!もう一発かますぞぉ!」

 「いや、あのね、そんなつもりじゃないんだけど…。」


 みんなには俺達がイチャついてる様に見えたらしく、木下の怒号が体育館中に響いていた。


 「問答無用!行くぞオラァァッ!」

 「うわっ、待って!」


 木下は俺目掛けて力一杯スパイクを打ってきた、もちろん俺と同じチーム女子達はそれをブロックしようともせず木下に思いっきり打たせていた。


 坂本、藤原、菊地に他数名、同じチームで味方だと思っていたのに裏切りやがった!

 なんて悠長に考えている間にボールは俺目掛けて向かってきたが、避ける事が出来ず硬直してしまった。

 直撃の寸前に勇吾が俺の前に立ち塞がり、殺人スパイクとも言える威力を持ったボールを勇吾はなんなく受け止めた。


 「私の渾身のスパイクが…。」

 「おいおい、渾身じゃないだろ!悪ふざけも大概にしろよ、女の子に向かって打つ威力じゃねーぞ!」


 余程自信があったのかあっさりとスパイクを受け止められ木下は呆然としていた。

 勇吾はというと珍しく怒っているみたいで木下に向かって怒りを顕にしていた。


 「わ、私達は二人の愛を確かめる為に敢えてスパイクを打ったんだよ!」

 「またあからさまな事言いやがって、下手したら怪我してたぞ。」


 木下の言葉に他の女子達は合わせたかの様に頷いていたが、勇吾はその様子に怒りを通り越して呆れていた。


 「しかし木下スゲースパイク打つな、これじゃ殆ど止められないし男子顔負けだな!」

 「そ、そうだろ?これでも一応女子バレー部のエースだったからね!」

 「知ってるよ、だったら尚更人に向かって打つもんじゃないよな?」

 「うっ…、その通りです、ごめんなさい。」

 「俺にじゃないだろ?」


 相手を持ち上げて乗ってきた所で非を打つ、やっぱりこう言う所は上手いな勇吾は。


 「歩ごめんね、悪ふざけが過ぎちゃったよ。」

 「ちょっと恐かったけど気にしなくていよ。」

 「恐い思いさせたお詫びしなきゃね。」

 「お詫びとか気にしなくていいから、でもアイスとか奢ってくれるなら喜んで受けるよ!」

 「アイスもいいけど、、、胸、揉んであげる!」

 「なんでそうなるのさ!」


 反省したかの様に見えたが錯覚だった、木下は目にも止まらぬ動きで俺の背後に回ると胸に手を回してきた。

 胸を激しく揉まれ身体中から力が抜け、しゃがみ込んでしまったがそれでも木下の猛攻は止まらなかった。


 「ゆ、勇吾助けてぇ。あっ、、んっ、やめ、ろって。」

 「みんな見てるし、もうそれ位にしておけって。」

 「私は歩の胸を大きくする為に、延いては勇吾の為になるんだよ!」

 「あ、あぁ。」


 納得すんなー!女の子が女子に胸を揉まれてる姿は見てて気持ちいいものなのかよっ?


 勇吾のバカ!スケベ変態!もう知らねー!












 ようやく午前の授業が終わり俺は一息吐いた。

 木下に揉まれた後の胸は火照り、身体中がムズムズしてしまい、全く授業に集中出来なかった。


 気のせいかもしれないが、一部始終を見ていた男子達の視線がとてもいやらしく感じた。

 勇吾が言っていた『変な事』とはこの事かもしれない、変な視線が集まるとある意味恐怖を感じる。


 女の子が激しく胸を揉まれている所を見てしまったら、思春期の男子には堪らないだろうな。

 それにもしかしたら…、うっ、気持ち悪くなるからこれ以上考えるのは止めよう。




 「あゆち~ん、一時間目から大変だったね~。」

 「あぁ、優花か、もうクタクタだよ。」


 後ろから声を掛けられ一瞬ドキッとしたが相手は優花だったので安心した。

 最早周りが敵だらけに見える俺にとって優花は安息をもたらしてくれる唯一の存在だ。


 「でも授業中にイチャイチャしてたらみんなの反感買うのも分かるよ~。」

 「そ、そんな事してないから!ちょっと話してただけだよ。」

 「だって~木下が言ってたけど勇吾君に抱きつきそうになってたって。」


 抱きつくって、、、胸ぐら掴んだのがみんなにはそう見えた訳ね…、みんなの脳内補正都合良すぎなんだけど!

 

 「ははは、例え人前で無くてもそんな事しないから。」

 「あゆちん目が笑ってないよ、怖いから~。」

 「もうそれもこれも全部勇吾が悪いんだ!」

 「何~、喧嘩でもしてたの?」

 「変な事言ってくるし、木下に襲われてる時も助けてくれなかったし。」

 「変な事って~?」


 しまった!つい言ってしまったけど更衣室での着替えの事だなんて言えない、何か言い訳を考えないと!


 「歩ちゃん!大丈夫か?怪我してない?」

 「うわっ、黒川君か、驚かさないでよ!」

 「ホントだよ~、いきなり後ろから声かけないでよ~。奏斗のバカ~。」


 優花ちゃん、あんたさっき俺に同じ事したでしょ…。

 でも確かに驚いたけどある意味ナイスタイミング!このまま黒川が話題を変えてくれれば言い訳を考えなくて済むぞ。

 

 「勇吾に聞いたけど、木下に打ちのめされたって?大丈夫かよ?」

 「その事か、大丈夫どこも怪我してないよ。」

 「木下の殺人スパイクで壁に穴が空いたんだって?しかもそれを歩ちゃん目掛けて打ったって聞いたぞ!」

 「壁に穴は空かなかったけど、狙われたのは確かだけどね。」


 とんでもなく話が大きくなってるな、勇吾の奴なんて話したんだよ。


 「なんだよ勇吾の奴大袈裟なんだよ、てかそもそもなんで歩ちゃん狙われたんだ?」


 ギクッ!やっぱり話題がそっちに流れていくのか、折角優花との話をうやむやに出来ると思ったのに。


 「それはね~、授業中に勇吾君とイチャイチャしてたからだよ~。」

 「なにー!?勇吾が悪いのに何で歩ちゃんが狙い打ちされるんだよ!」

 「だから違うって言ったじゃん!ちょっと話してただけだよ。」

 「あいつが話しかけなきゃ歩ちゃんが危ない目に遭わなくて済んだのに!」


 あぁ~これはこれで面倒臭い。

 結局授業中に勇吾と話すきっかけを作ったのは俺であり、木下に狙われる羽目になったのも俺が勇吾に突っ掛かろうとした所を誤解された事にあるし。


 もうダメだ!逃げ出したい、全部白状したら楽になれるかな…。

 




 「じ、実はね、今日の体育で私だけ来るの遅かったでしょ?それで先生に怒られた私を見兼ねて勇吾が…。」

 「そう言えばそうだったね~、てかあゆちん着替えの時居た~?」

 「いや…、ちょっと別の場所で着替えてたよ。」

 「なんで~?更衣室嫌なの~?」

 「嫌って言うかさ…。」


 あぁ~、ついに話してしまった。やっぱり不審に思うかな、女の子なのに女子と着替えないなんて。

 けどこのままじゃ勇吾が悪者にされてしまうし、てか悪者にするのは黒川だけだけど。


 「何~歩ちゃん、私達と着替えるのが怖いのかな~?」


 うわっ!またこのパターンかよ、頼むから後ろからいきなり声掛けんなよ!

 しかもよりによって木下だし…。


 「あっ、分かった~。あゆちん木下に襲われるのが怖いんでしょ~?」

 「えっ、いや、そんな事はないよ。」

 「思いっきり動揺してるじゃん、てか嫌ならちゃんと言ってよね。てっきり私は楽しんでると思ってたんだけど。」


 おっ、ちょっと流れが良くなってきたかも。そう言う事にしておけば更衣室を使わなくても不審に思われないぞ。

 でも木下の言う事は少し心外だな!


 「た、楽しんでなんか無いよ。」

 「だって、いや~ん!とかあっは~ん!とか声出して良がってたでしょ?」


 「だ、だって声出ちゃうだもん仕方ないでしょ…。」


 「ア、アリかも。」

 「はい?今何て言った?」

 「その恥じらう姿可愛過ぎるっ!私女だけどアリかもー!」


 はっ?何この突然のカミングアウトは?

 俺、中身は男なのに女子に可愛いって言われるしもう意味が分からない!

 誰かこの変態達を止めてくれよ…。

 

 



 結局着替え中は襲わないと言う確約を貰い晴れて更衣室を使える事になり、俺の更衣室事情は静かに幕を閉じた。


 、、、ってそっちじゃないから!俺が更衣室を使わないのには他に理由があるのに。

 これじゃ次から他の場所で着替えてたらまた面倒臭い事になるじゃねーか!


 


 


 


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