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図書館に1,000年ほど引き篭もっていたエルフですが、外に出たら知らない文明が栄えていました。  作者: 奇蹟あい
第三章 忘れじの塔

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第9話 魔法偽装の痕跡

【罠らしきものは何もなかったね】


 そうね、警戒して損したわ。

 でもメミニ。あなた結局一度も罠感知に協力しなかったわよね。緊張感もなく、ずっとしゃべってばかりで。わたしばかり神経をすり減らしていて、不公平だと思わない?


【外側からの構造確認はしておいたよ。本当に入り口らしきものは一切ないね】


「ちょっと、無視しないで!……また勝手に調べて。わたしにも調査させてちょうだい」


 せっかくここまで来たのに、見ているだけなんてつまらないわ。

 まずは塔自体を調べてみましょう。


「本当にツルツルね……。とても良い手触りなのだけれど、材質は何かしら。石のようだけれど、一切魔力反応がないわ」


【こんなに巨大な人工物なのに、石につなぎ目がまったく見当たらない。さすがにこれはありえないことだよ。魔法で偽装されていると見るのが自然だろうね】


 それはそうね。

 近づいてみると、本当に大きい建造物だわ。端から端まで、直径で1km以上はあるかしら? それなのに出入口どころか、窓や空気穴も見当たらない。さすがにこれがありえないことだというのには、わたしも同意よ。


「どこかに必ず偽装の痕跡があるはずよ。時間を掛けて調べる必要が――」


【ねぇちょっと、リアンナ! ここに不思議なくぼみがあるよ! かなり怪しくない⁉】


 だからなんで先に見つけちゃうのよ……。

 わたしにも探させてって言っているのに……。


「……どれよ」


 せっかく見つけてくれたものを無視するわけにもいかないし、一応見るわよ。

 でもね、使い魔程度のあなたが、そんな簡単に魔法の痕跡なんて見つけられるわけないのよ。これだけ大きな建造物となると、何重にも巧妙な偽装が施されているはずだから、少しずつ範囲を決めて魔力(オド)をぶつけて共鳴反応を見ていくしか方法が――これ、魔法偽装の痕跡に間違いないわね。


【どう? すごく怪しいよね?】


 こんなわずかな痕跡が、あんな一瞬で見つかってたまるものですか。

 あなた、実はわかっていて言っているでしょう?……わたしのことをからかって遊んでいるのかしら?


【おいらすごい? 優秀な使い魔?】


「……これは間違いなく魔法による偽装ね。でもあえて見つかるようにしているような……。罠かもしれないわね」


 あら? よく見れば偽装跡のすぐ上に、とても薄く古代文字が書かれているわ。


---------------------------------------


 我らの役目は終わりを告げる。

 この封印を解くことができた者にすべてを託す。

 気持ちは言葉に、想いは態度に。

 今度は決して後悔しないように。


---------------------------------------


「ねぇ、メミニ……」


 この言葉って……。


【そうだね。おいらが1,000年前にリアンナから預かった言葉と同じだね】


 使い魔契約をした時に、図書館で伝えてくれたメッセージ。


「気持ちは言葉に、想いは態度に。今度は決して後悔しないように……ね」


 そう……1,000年前のリアンナ(過去のわたし)が、1,000年後のリアンナ(未来のわたし)に向けて遺したメッセージがここにあったの……。

 じゃあこの塔が、わたしの探し求めていた手掛かり、なのね……。



「少し離れていなさい。(aperiens)(-cor)の魔法を使ってみるわ」


 塔の表面にある怪しげなくぼみ。魔法偽装の施された跡に、(スタッフ)の先端で触れてみる。

 今のところ怪しげな反応はなし。


 最初はお試しで、本当にごく微量の魔力(オド)を使ってみようかしら。


(aperiens)(-cor)


 バチンという激しい音。

 塔の表面に接触させていた(スタッフ)とともに、わたしの体は弾き飛ばされてしまった。

 まさかここまで強い結界が張られているなんてね。弾かれた反動で地面を転がってしまったわ……。無様なわたし。


【リアンナ! 平気⁉】


「大丈夫よ。ちょっと甘く見過ぎていて、力負けしただけよ」


 ゆっくりと立ち上がり、ローブに着いた土を払い落とす。

 別に深刻なダメージを受けたわけじゃないし、そんなに心配そうにしないで。


 微量の魔力(オド)では、この塔の偽装は剥げそうにないわね。

 でもかなり強力な偽装が施されていることはわかったわ。


「今度はそれなりの量の魔力(オド)を流してみるわね。もし次もわたしが弾き飛ばされるようなことがあったら、後ろで受け止めてくれるかしら?」


 これだけの量の魔力(オド)が跳ね返ってきたら、さすがに無傷では済まなそうだし。


【もちろんだよ。後ろの守りは任せておいて】


 メミニがわたしの背後に回り、握りこぶしを見せてくる。


「もう少し離れていて」


 メミニが十分に離れたことを確認した後、深呼吸をしてから、再び(スタッフ)の先端を魔法偽装のくぼみにコツンと当てた。


 忘れじの塔(オブリビオンタワー)全体を覆う魔法偽装に対抗するイメージで魔力(オド)を練り込む。


 しっかりと練り込んで、偽装との力比べに当たり負けしないように――。


 もし魔力(オド)を使い切っても、メミニが助けてくれるから大丈夫。

 全力で、この偽装を剥いでみせるわ。


 リアンナ、集中よ。


「ふー……。(aperiens)(-cor)!」


 練り込んだ魔力(オド)を、(スタッフ)を通じて塔の魔法偽装に対して一気に流し込む。



 バチ……バチバチバチ。


 わたしの魔力(オド)と魔法偽装がぶつかり合う音。


 決して意識を持っていかれないように。

 絶対に当たり負けしないという気持ちを(スタッフ)に込めて。


 バチ……バチ……。



 パンッ。



 まるで金属がはじけるような炸裂音。その直後に地鳴りが起こり始めた。


【リアンナ! 大丈夫⁉】


 遠くのほうから、メミニの叫び声が聞こえてくる。


「もう大丈夫! こっちにいらっしゃい! わたしの勝ちね。偽装が剥げるわ」


 地鳴りが治まると、今度は塔自体が音を立てて――。


 ゴゴゴゴゴゴ……。


 大きな扉が姿を現した。


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