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図書館に1,000年ほど引き篭もっていたエルフですが、外に出たら知らない文明が栄えていました。  作者: 奇蹟あい
第六章 王城

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第38話 人族の年齢

 遠くのほうからわたしの名前を叫びつつ走ってくるのは――。


「リアンナ様! リアンナ様~~~! おひさしぶりでございます~~~~~!」


 あら、入り口のところで誰かがナパヤの屈強な使い魔に捕まってしまったわね。

 でも誰かしらね? 屈強な使い魔よりも一回り体が大きいわね……。でもあんな人族に見覚えはないわ。といっても、そもそもわたしに人族の知り合いなんていないのだけれど。


【リアンナは人族の顔を覚えたことがないよね。おいらも強くは言えないけれどね】


「メミニ、いつの間に起きていたの?」


【ユウトが到着したって教えてもらったからね。うぷっ】


 まだ酔っ払ったままなのね。


「さっさと解毒の補助魔法を使いなさい」


【それはリアンナのオリジナル魔法でしょ。おいらにその術式を再現するのは無理だよ】


「だらしない使い魔ね。解毒(antidotum)


【あーもう、また人前で魔法を!……でもすっきりした。助かったよ】


「詠唱も魔法陣もない補助魔法よ。一瞬だし大丈夫よ」


 魔法が使えない人族には、何が起きたかなんてわからないわよ。


「リアンナ様! 今のが魔法でしょうか⁉」


 ナパヤの目が輝いて……見られていたわね。油断も隙もない。でもさっきまでのどんよりと曇っていた表情とは大違いね。


「ええそうよ。大した効果のない補助魔法よ。それより入口のところで止められている男のことなんだけど――」


「メミニ様の全身が光りましたね! きれいだ。ぜひ! ぜひもう1回見せてもらえませんか⁉」


 魔法に夢中でぜんぜん話を聞いていないわ……。


「それは……またメミニが酔っ払ったらね。すぐにその機会は訪れると思うわ」


 と、メミニのほうに視線を向けてみる。

 あら、ずいぶん気まずそうね? そうよね。使い魔として、主人を残して1人泥酔するなんてありえないものね。


【ごめんって……。ここの果実酒はとてもおいしいけれど酔いやすいんだ。もう一気に飲まないように気をつけるよ……】


「ああっ! メミニ様にはぜひもう一度酔っていただかないと困ります! できるだけ強い酒を用意させますので、今しばらく!」


 それだけ言い残すと、ナパヤは走り去ってしまった。

 だから入口の男はどうするのかしら……?


【おいら、もう絶対に飲まないよ! リアンナにこのネタで500年はいじられそうだし……】


「そんなにうれしいなら、800年くらいはいじってあげるわよ。酔っ払いの使い魔さん?」


 とっても渋い顔ね。

 800年とは言わず、1,000年は楽しめそうだわ。


「あ、メミニさんおかえりなさ~い。この薄いお肉が重ねてある料理がとってもおいしいんです。ぜひ食べてみてくださいよ~」


 ルナリアが大皿を手にして、わたしたちのところに駆け寄ってきた。

 小皿に取り分けて食べる分だと足りなかったのね……。ああ、細身の使い魔が悲しそうな顔で首を振っているわ。本当にごめんなさいね、わたしのルナリアが迷惑をかけてしまって……。


「ルナリア、それはこの会場にいるみんなが取り分けて食べるものなのよ。たくさん食べたくても大皿ごと確保してはダメなの。料理が足りなくなりそうになったら……ほら、奥から調理担当の使い魔が新しい料理を持ってきてくれるのよ」


「すみません……。返してきます……」


 ルナリアは足取り重く、大皿を抱えて料理の皿が並ぶ壁際のスペースに向かって歩き出す。


 少し厳し過ぎたかしら……。

 でもこれも親としての務めよね。いつも甘やかすだけではなくて、時には厳しく教育もできるというところを示さないといけないものね。


【たしかに今のは良い指摘だったね。リアンナはこういう人族が集まる場は初めてだと言っていたのに、正しい振る舞い方を知っているんだね?】


「前に図書館にある本で読んだのよ。テーブルマナーというのがあるとね。たしかこういう形式の会は、立食パーティーと呼ぶのよ」


【へぇ、リアンナは何でも知っているね。すごいや!】


 メミニが感心したように手を叩いた。


「人族に関する知識も多くあるけれど、すべて空間消滅前の知識だから、今も通用するとは限らないのが難点ね」


 でも、大皿を持ってきてはいけないのは、周りの人族の動きを見ていればわかるわ。どうやらパーティーでの振る舞いに大きな変化はなさそうね。


「リアンナ様! 俺です、俺! ユウトです! リアンナ様~~~!」


 ユウト?

 声の主は……さっきの大柄な人族ね。

 まだ入り口のところで、ナパヤの屈強な使い魔に止められているのね。でも……わたしの知っているユウトとは違うわ。ユウトはもっと小さくてかわいらしかったもの。やはり人違いかしらね。


【でもリアンナの名前を呼んでいるよ? おいらたちがユウトと出会ってから、もう10年……15年は経つよね。それくらい経てば人族の子どもは大人に成長するんじゃなかったかな?】


「あらそうなの? では、異常に上半身に筋肉がついていて、肩幅が合っていない礼服を着ていて、この場の雰囲気に似つかわしくないほどの大声でわたしの名前を叫び続けているあの男がユウトだと言うの?」



【本人がそう言っているからそうなんじゃないかな? 騎士団に所属していると言っていたから、体を鍛えたんじゃない?】


 なるほど、そうなのね。

 でもナパヤの使い魔のほうがバランスの取れた筋肉をしているし強そうね。


【それはかわいそうだから本人には言わないでおいてあげようね】


 そういうものかしら?

 人族は難しいわね。


【ユウトはたぶん……20~25歳くらいだと思うんだ。人族だと『若者』と呼ばれる年齢だよね。ナパヤ王子の使い魔はもっと年上に見えるから、戦闘訓練の年数が違うんだと思う。単純に比べるのはかわいそうなんじゃないかって思うんだ】


 人族のことはわからないわ。

 でもメミニがそういうならそっとしておきましょう。


「ねぇ、あの人を通してあげてちょうだい。おそらく招待客のリストに名前が載っているわよ」


 近くにいた人族に話しかける。あなたもナパヤの使い魔よね? ほかの使い魔と同じ服装だし。


「そうよ、あの大きな人族よ。名前はユウトナパヤが招待したと言っていたし」


 そんなにかしこまらなくても良いわよ。わたしのほうから話しかけたのだし。

 あら、急いで入口のほうへ走っていってしまったわ。


 屈強な使い魔が招待客リストを確認。すぐに誤解が解けたみたいね。


「リアンナ様~~~! ありがとうございます~~~~~!」


 ユウトは大声を上げながら、広間の中に走って入ってきた。

 入れて良かったわね。

 でもユウト。パーティー会場内を走り回るのはマナー違反よ。周りの人族も迷惑そうにしているわ。


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