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図書館に1,000年ほど引き篭もっていたエルフですが、外に出たら知らない文明が栄えていました。  作者: 奇蹟あい
第五章 新たな旅路

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第31話 宿屋の見分け方

「少し陽が傾き始めたわね」


 ずいぶん歩き回ったし、そろそろ街を離れて――。


【せっかくだから、今夜は街の宿屋に泊まってみるのはどうかな?】


 なるほど、それは記念になりそうだし、良いアイデアね。メミニにしては良い提案をするじゃないの。わたしは賛成よ。


「その……宿屋というのは何をするところなのでしょうか?」


 ルナリアが不安そうな表情でメミニに尋ねる。

 ルナリアは塔での生活が長かったし、わたしたちと外の世界に出た後も野宿ばかりだし、宿に泊まった経験はなかったわね。まあ、わたしも知識として知っているだけなのだけれど。


【簡単に言えば、寝床を貸してくれるお店かな。屋根がついていて雨露を凌げるんだよ】


「すごいです。そんなお店があるんですね! ルナは宿屋に興味があります!」


「自分で寝床を確保しなくても良いというのは宿屋の利点よね。あとは質の良い宿屋に泊れば、食堂が併設されていたり、湯浴みができるところもあるらしいわよ」


 それも文献で読んだわ。

 湯に浸かれるところもあるらしいわよ。


【2人とも賛成なら、さっそく宿屋に行ってみようか。せっかくならただ泊まるだけではなくて、夕飯が食べられるようなところが良さそうだね】


「わたしはお湯がたくさん使えるところが良いわ」


「ルナはお肉がたくさん食べられるところが良いです!」


【みんなの希望を全部叶えられる宿屋はあるかな?】


 期待に胸を膨らませ、わたしたち3人は宿屋が立ち並ぶエリアへと足を踏み入れて行った。



* * *


 宿屋の受付で店主と話をしていたメミニが、肩を落として戻ってくる。


「それじゃあここも満室なの? この店もまた1部屋も空いていないと言われたの?」


【ごめんよ……。おそらくこのエリアの宿屋は全部埋まっているだろうって言われたよ……。まさかこの街の宿屋がこんなにも人気があるなんてね……。どうやら明日、そこのお城で第二王子の騎士叙任式が行われるらしくて、観光客が押し寄せているらしいよ】


「王子? 騎士叙任式? それは何かしら?」


【ここは王城がある街だからね。第二王子は、この国を治める王の息子のことだよ。明日18歳になるから、騎士に叙任されるところをみんなで見守るんだって。王の子だから、みんなが注目しているらしいよ】


「魔王以外にも王がいるのね。人族の王の子……せっかくだから明日見てみましょうか」


 なかなか見られるものではないから、人が集まっているのでしょう? おもしろそうじゃないの。


「王というのはえらい人ですよね。ルナも見てみたいです!」


 ルナリアも興味を持ってくれたのね。

 一緒に楽しみましょう。


【2人で盛り上がっているところ悪いんだけど、今夜泊まる宿がまだ見つかっていないんだよね……。この街に留まり続けるなら、安宿でもなんでも良いから宿を取らないと……】


 メミニはなぜそんなに深刻そうな顔をしているの?


「このエリアの宿屋は埋まっているのよね? 街に住んでいる人にほかのエリアの空き状況を訊いてみるのはどうかしら。何人かに声を掛ければ、詳しい人がいるかもしれないわ」


【自分たちの足で探すんじゃなくて、詳しそうな人に訊く……良さそうだね! でも、おいらには個々の住人と旅人の区別がつかないや。人族の顔はあまりちゃんと覚えられないな】


「顔なんてどうでも良いのよ。たぶん……軽装でその辺を歩いている人か、裕福そうな人に訊けば良いじゃないかしら?」


【何で軽装な人か裕福そうな人に尋ねるの?】


 あら、ピンと来ていない様子ね。


「簡単よ。軽装で出歩いているなら旅人ではないということよ。この街の住人なら地元の宿屋の情報にも精通している可能性が高いわ。裕福そうな人は旅人だったとしても、普通の旅人を泊まらせないような高級な宿屋と懇意にしている可能性があるから、困っている素振りを見せれば、そういうところを紹介してもらえるかもしれないじゃない?」


 今の話、聞こえなかったかしら? メミニはなぜ口をパクパクさせているの?


【リアンナがすごくまともなことを……。おいらびっくりしちゃって……】


「失礼な使い魔ね。前に読んだ本に書いてあったのよ。旅の基本として、1番の安宿に泊まってはいけないとか、宿屋の入り口から顔を覗かせた時にすぐに挨拶のない宿屋は泊まる価値がないとか。ちゃんといろいろ知っているわよ」


「リアンナさんすごいです……。尊敬です……」


 本の知識を披露しているだけなのに、ルナリアから尊敬のまなざしを向けられるのはとても気持ちが良いわね。もっと知っていることをひけらかしていきましょう。


「わたしに知らないことなんてないのよ。この中では1番詳しそうだし、ちょっとわたしが宿屋を探してくるわね」


 すぐに見つかるから期待していなさい。

 軽装か裕福か……。


 あら、ちょうど良さそうな人間が歩いているじゃないの。


「ちょっとそこのあなた。あなたの泊まっている人族の宿屋を紹介してくださらない? わたしね、明日、王子の騎士叙任式があると知らなくてこの街に来てしまったの。そうしたら宿屋がいっぱいと言われてしまって……。今夜泊まれる宿がなくてとても困っているのよ」


 なんなら宿屋の情報を知っていそうな人を紹介してくれるだけでも良いわ。


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