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図書館に1,000年ほど引き篭もっていたエルフですが、外に出たら知らない文明が栄えていました。  作者: 奇蹟あい
第五章 新たな旅路

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第25話 まだ知らぬ合成魔法の効果

 メミニが空間魔法を使って――。


「……これで何回目だったかしらね?」


 5回? それとも10回目かしら?


「リアンナさん……28回目です」


 あら、もうそんなに?

 ずいぶん無駄に魔力(オド)が減ってしまったわ。


【1%も減っていないのによく言うよ。ランダム転移だから、街のそばにいけるかどうかは運次第だって、おいら最初に言ったよね?】


「ええ、もちろんわかっているわ。だから別に責めてなんていないじゃない」


 たくさんの森や林、湖、そして草原。

 この世界の自然を満喫してるわ。


 たまには人族とも触れ合いたいとは思ったりもするけれど、急がない旅だし、ゆっくりで良いわよ。次は街の近くに行けると良いわね。


【それがプレッシャーをかけているって言うんだよ……】


 被害妄想ね。

 わたしが「大丈夫」と言っているのに。


「ここまでいろいろな場所を見られて、とっても楽しいわよね、ルナリア?」


 これまでの人生の大半を塔の中で過ごしてきたルナリアにとって、外の世界はすべてが新鮮に映るはずよね。


「森の中にたくさんの生き物がいてびっくりしました! ルナたちを見てもぜんぜん襲ってきませんし、不思議ですね!」


 目をキラキラ輝かせて……なんて愛らしいのかしら。こんなに愛らしい生き物なら、抱きしめても大丈夫よね? ね?


 姉さんの子。わたしの唯一の血族……わたしの子も同然よね。


「り、リアンナさん、苦しいです……」


 子どもが遠慮なんてしなくて良いのよ。お母さんのぬくもりを感じなさい。


【リアンナ、普通に嫌がっているからやめてあげなよ……】


「嫌がってなんていないわ。照れているだけよね」


 顔を赤くしてかわいいんだから。ぎゅー♡


【ほら、次の空間に繋がったよ。2人とも早くしないとおいらだけで行っちゃうからね】


 あきれ顔のメミニが、1人で空間魔法で開けた歪みの中に消えていく。


「せっかちね。せっかく母娘のスキンシップを楽しんでいるところなのに……」


 あら? ルナリアったらどうしたのかしら。青い顔をして泡なんて吹いて。気絶ごっこでお母さんの気を引こうとしているの? かわいい子ね♡


【それは……たぶん本当に気絶している状態だと思うよ】


 あら、メミニ。おかえりなさい。


【抱きしめるのは良いと思うんだけど、リアンナの胸の谷間に挟み込んだら息ができなくなって窒息するから、ハーフエルフは死ぬと思うよ】


 ハーフエルフは呼吸をしないと死ぬの? 不便な種族ね。


【それはそうでしょ。しかめっ面していないで、早くところ回復させてあげないと】


「でもわたし、聖魔法に属する回復魔法は使えないわよ」


 困ったわね。


【前に再生(vivifica)の合成魔法を使った時に、人族の子どもが回復したことがあったよね】


「あれはたしか……ユウト。そう、体に『刻印』というものが浮かび上がったせいで、神様という存在に捧げられていた子どもね。懐かしいわ」


 あれから何年になるかしらね。

 でも再生(vivifica)は、土と水の合成魔法で、樹木にしか効果がないはずなのだけれど……。


【そうだね。それでも、ユウト少年には効果があった。リアンナは再生(vivifica)が樹木にしか効果がないと思い込んでいただけで、実際にはもっと効果範囲は広いんじゃないかなっておいらは思っているんだ】


「そうね、それはありえるわ……」


 エルフ族同士では効果がなかった、というだけで、ほかの種族に試してみたことはなかったものね。それに、今はわたしたちの時と時代が変わっている。魔力(オド)を持たない種族に対して魔法を行使した時に、どんな影響や効果があるのかまったくわかっていないわ。ハーフエルフという稀有な存在に対してもね。


「効果があるかないかわからないなら、一度試してみるしかないわよね。ルナリアの顔も青白いままだし、やれることはやってみようかしら」


 ルナリアの体を地面に横たわらせてから、その体に向かって(スタッフ)をかざす。


再生(vivifica)


 ルナリアの体に、細かい泡のシャワーが降り注がれていく。

 これが植物相手であれば、中の細胞が活性化されて、たちどころに活気づくはず……あら? ルナリアの体に赤みが差してきたわね。


【やっぱり効果があったね】


「本当に……。不思議だわ」


 これまでの人生の大半を魔法研究に費やしてきたつもりだったのに、わたしの知らないことがまだまだありそうね。とてもうれしいわ。もっともっと魔法の研究をしたいわね。魔導図書館のような場所が他にあれば良いのだけれど……。この世界を見て回ったら、いつか魔導書を保管してある場所に行きつけたりしないかしらね。そうでないとすると、自分で一から未知の魔法の掛けあわせを試していかないといけないわ。


「あれ……ルナはいったい……」


 ルナリアが意識を取り戻し、上半身を起こして辺りをキョロキョロと見まわしていた。


「気がついたのね。良かったわ」


【あやうくリアンナの豊満な胸に溺れて窒息させられるところだったね】


「言い方がいやらしいわよ。消滅したいの?」


 そういうおふざけは嫌いだと前に言わなかったかしら?


【誇張なしの事実なのにひどいよ……】


 なんでルナリアの後ろに隠れるのよ。

 まさかルナリアにわたしの消滅魔法を代わりに受けさせようというの? ひどいのはどっちかしらね。


【撃たないでと言っているんだよ。それに使い魔のおいらにダメージを与えたら、ご主人様のリアンナにもダメージは返ってくるんだからね。前にも言ったと思うけれど】


「メミニを消滅させる程度の威力なら、わたしに返ってくるダメージは、生爪が1枚剥がれるくらいのものかしらね。ギリギリありね……」


【なしだよなし! 冷静に検討するのはやめてよね。どこまでが冗談かわからない真顔で……しかも心の中でも同じことを思いながら口に出すのはとっても怖いよ!】


 もちろん半分冗談よ。

 そんな簡単に使い魔を消滅させるわけないじゃない。


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