第20話 この先の方針決め
ちょっとルナリア!
わたしからじわじわと距離を取っていくのをやめなさいよね!
どれだけわたしのことが嫌いなのよ……。
「はぁ……もう良いわ……。でもいつかは『お母さん』と呼ばせてみせるから覚悟しておきなさい!」
姉さんの子はわたしが育てるわ!
【ルナリア、あれでリアンナは悪い人じゃないから、まあ、ほどほどの距離感で付き合っていけば問題ないよ】
「そう、なんですね……。がんばり……ます……」
だからなんでちょっと要注意人物みたいに取り扱うのよ!
あなたたち2人とも、わたしの庇護下にあることを忘れるんじゃないわよ!
* * *
さて、ミミックの足鍋で腹ごしらえも済んだところで、この先の方針を立てないといけないわね。
まずは重要なことをルナリアに確認しておきましょう。
「もう一度尋ねるけれど、この塔にはわたしたち3人しかいない。これは間違いないわね?」
「はい。ルナがこの塔に入ってから、これまで新たに人が入ってきた形跡はありません。ルナたちの後に再び塔の封印が解かれたのは、リアンナさんたちが入ってきた時の1回だけです」
それであればわかりやすいわね。
「ありがとう。つまりこれからいくら上層階に行ったとしても、誰かに会うことはないというわけね」
これ以上のこのダンジョンを探索しても、時間の無駄になってしまうかしらね。
わたしたちの時代の情報を集めるには、塔の外に出ないといけない。最速でダンジョンをクリアしましょう。
【また塔の外に出ないといけないんだね。……そっかぁ】
メミニが床に座り込んでしまった。
明らかにテンションが下がっているわね。
「あら、浮かない顔ね」
【だってさあ、外の世界は魔力がすご~く薄いんだよ。たくさん食べて栄養を取らないと、すぐに疲れちゃうし……。ここの快適さに慣れてしまったら、外に出たくないなって……】
「それはわたしも同感よ」
【じゃあ!】
露骨にうれしそうな顔をしないで。
「ダメよ。外に行くわ」
【なんで!】
「ルナリアの時間は有限なのよ」
「ルナですか⁉」
ルナリアが、突然自分に話を振られて目を白黒させている。
この様子だと自覚はないみたいね。
【……ごめん。おいらがどうかしていたよ。急いで外に出よう】
メミニが立ちあがり、慌てたように鍋類を片づけ始めた。
「そこまで焦ることはないと思うけれど、わかってもらえたのならうれしいわ。水球」
メミニの持ちあげた鍋や食器を、水の球の中に取り込む。
あとは風渦で球の中の水をかき混ぜて汚れを落としていく。
「これで良いかしらね」
【ありがとう。いつも助かるよ】
メミニは、わたしが洗いあげた鍋や食器を、次々と空間魔法の中に収納していった。
「すごいです……。魔法にはそんな使い方もあるんですね……」
ルナリアの目が輝いていた。
これが尊敬のまなざしというやつかしらね。わたしにこんな目を向ける子がいるなんて……新世界も悪くないかもしれないわ。
【ねぇ、リアンナ。悦に入っているところ申し訳ないんだけど、ルナリアにも魔法を教えてあげたらどうかな?】
「そうね。この先一緒に旅をしていくなら、あなたがどんな魔法を使えるのか知っておいたほうが良さそうね。ルナリアはどんな系統の魔法が使えるのかしら?」
わたしが使える系統の属性魔法が得意なら、いろいろと教えてあげることもできるかもしれないわ。
「ルナは……魔法がよくわからないです……」
「わからない? 何も魔法が使えないの?」
ハーフエルフだし、人族のほうの血が濃く出れば、そういうこともあるのかもしれないわね。
あまり得意ではないけれど、剣の使い方を教えておいたほうが良いかしら。
「いえ、使えるには使えるのですが、お父さんも■■■さんも■■■さんも魔法には詳しくなくて……。ルナもなんとなくの感覚で使っているので、合っているのかわかっていなくて……」
師がいない環境なら仕方ないわ。
そんなにモジモジしないの。もっと堂々としていなさい。
「何でも良いわ。見せられる魔法を見せてちょうだい。ターゲットが必要なら……そうね、メミニに向かって放ちなさい」
【おいらがターゲット⁉】
メミニはびくりと肩を震わせ、少し後ずさりをする。
でも完全に拒否というわけでもないわね。
「大丈夫……でしょうか……」
不安そうなルナリア。
でも、やる気がないわけではなさそうね。
「メミニはわたしの庇護下にある元魔族よ。ちょっとやそっとの魔法を受けても痛くも痒くもない。そうよね?」
【う、うん! そうだね? おいらはリアンナの使い魔だから、とっても強いのさ!】
虚勢ね。
ルナリアの実力がわからない以上、もしかしたら一撃で消滅させられることもあり得るのだし。なんせ、あの姉さんの娘なんですもの。そうなったらごめんなさいね。
【リアンナ……心の声がさっきから怖いよ……】
「あら、メミニったら。乙女の心の声を盗み聞きするなんてエッチね」
【誰が乙女なのさ、誰が! 2,000歳越えの――】
あら? 急に口元を手で覆ったりして、どうしたの? その先は言葉を紡がないのかしら?
【なんでも……ない……】
「そう? じゃあ、ルナリアの魔法を受けてあげてちょうだいね」
この世のすべてを斬り裂く氷刃をその身に受けたくないなら、謙虚におとなしくね? わたし、年齢の話でいじられるのは好きじゃないの。覚えておいてちょうだいね。
【わ、わかったよ……】
素直な子は好きよ。
あら、ルナリアはそんなに怯えることはないじゃない。
あなたは悪い子なの? 違うでしょう?
さあ、早くわたしにあなたの得意な魔法を見せてちょうだい。




