第12話 ダンジョン攻略とマップ作り
「こっちも行き止まり……」
これで何度目かしら。
左、右、右、左、右、右……。
二股の分かれ道は必ず片方が行き止まりになっているわね。ずっとハズレばかり引いているわ……。勘が鈍ったのかしら……。
次は左ね。さっき2連続で右だったもの。
と見せかけてもう一度右よ!
「もう! 今のは最初に直感で選んだのと逆側を進んだじゃない! なんでハズレで行き止まりなの⁉」
こんなの詐欺よ!
わたしの裏を掻こうするなんて良い度胸じゃない。こんな壁粉々に……できないのだったわ。どんなに強力な魔法を放っても、この薄そうな壁に全部吸収されてしまうのよね。それでいて反射してくるわけでもないし、どういう仕組みなのかしら。
今度こそ左よ!
「また行き止まり⁉」
1つ分岐を戻って反対側を進めば良いだけでしょう。わたしだって良い大人だし、こんなことくらいで怒ったりはしませんけれど?
「キィィィィィィィィ!」
1回左に行ったふりをして右に進む作戦が読まれたわ! なんて意地の悪い! 今度という今度は堪忍袋の緒が切れたわ! 責任者出てきなさい!
誰も出てこないわ……。
人どころか魔物さえも出てこないわね。
あら? 何か見慣れないものが……これは2階への階段かしら⁉
「間違いないわ。天井に向かっているし、2階へ通じている階段よ! メミニがいなくたって1人で探せるんだから!」
【その声はリアンナ? あ、やっぱりリアンナだ】
2階へ通じる階段から降りてきたのはメミニだった。
【なんだ、おいらのことを待っててくれたんだね。てっきり先に行っちゃったかと思ったよ。痛てっ! ちょっと、なんで今、杖で殴ってきたの⁉】
「別にっ!」
ただムカついただけよ!
【一見迷路みたいなダンジョンだけど、よく見たら進むべき方向はわかりやすく示されているし、地図を作るほどのことはなかっ――痛てっ! だからなんで殴るの⁉】
「別にっ!」
メミニのことなんて、心底キライよ!
【どうしたの。そんなに怒って……。こうして再会できたんだから良いじゃないか……】
「そうね!」
【もう……。そうだ、ご機嫌斜めのリアンナに朗報だよ!】
メミニが赤茶色の手帳を開いて、何かを見せてくる。
暗号、かしらね。
グネグネと曲がった線の先に×印が記されて……。
【ここで宝箱を見つけたんだ! それでリアンナと一緒に開けようと思って、急いでリアンナを探しに戻ってきたってわけ。ほら、誰かに開けられちゃう前に急いで急いで!】
メミニが強引にわたしの手を引っ張って、2階への階段を上っていく。
こんなに興奮しているメミニを見るのは初めてかもしれないわね。ダンジョン探索でテンションが上がっているのかしら? ちょっとかわいいわ。
「そんなに焦らなくても、ここまで誰ともすれ違っていないのだから、宝箱を盗られる心配なんてないのではなくて?」
もし人が生き残っているにしても、きっともっと上の階にいるような気がしているわ。
なんとなくの勘だけれど。
【たしかに4階までは一切人の気配がなかったよ。でも5階に足を踏み入れてみたら、空気が変わったから、もしかしたら何かいるかもしれない。宝箱は5階に上がってすぐのところにあったから、誰かに発見されても不思議はないかな】
「ちょっと待って。あなた、5階まで到達したの⁉ この短時間で⁉」
どういうことなの……。
わたしがずっと1階を彷徨っている間に……。
【リアンナが楽しそうに1階の全部の通路を回っていたから、おいらは先に偵察に行っていただけなんだけど……】
楽しそうに……?
【マップ作りは意味がないなんて言っておきながら、わざわざ行き止まりの道まできっちり調べ上げるなんてね。もう素直じゃないんだ――痛いよ。なんですぐに杖で殴るの⁉】
あなた、わかっていて言っているわよね!
腹立つわー! もう2、3発殴ってやろうかしら!
【置いていったことは謝るよ。でも、1人で宝箱を開けずに戻ってきたでしょ……。それで許して……】
「ふん! 使い魔なら使い魔らしくしなさいよ!」
主人より先にダンジョン攻略するなんて生意気すぎるでしょう! 次やったら特大の火魔法で焼くわよ!
さっさと宝箱のところまで案内しなさい!
* * *
メミニに手を引かれ、迷うことなく5階へと到達。
たしかに空気が違うわね。
人の気配はないのだけれど、空気の流れが4階までとはまったく違うのはわかる。人か、魔物か、何かが息づいている予感があるわ。
【ああ~! やられている……】
突然、メミニが大声を上げた。
「どうしたのよ。そんな何もないところでうな垂れて?」
【さっきおいらが来た時には、ここに宝箱があったんだよ!】
メミニが悔しそうな表情で指し示す場所――いくら見ても何もないのだけれど。
「どこか通路を間違ったのではないの?」
【いいや、階段からここまで一本道だし、間違いようがないよ】
「でも、空の宝箱もないじゃない?」
そう、メミニが立っている場所は、まっすぐな通路の途中。曲がり角でも、行き止まりでもなく、何の変哲もない通路なのよね。こんなところに宝箱があるとは思えないのだけれど。
【ダンジョンは魔物の幻影や宝箱の出現場所が決まっているらしいというのを聞いたことがあるよ。ここもそうなのかもしれないよ】
「位置が固定されているダンジョンと、毎回変化するダンジョンがあるというのは本で読んだわ」
ここはどっちかしらね?
【誰かに取られてしまったとしても、しばらく待っていたら再出現するんじゃないかなって思うんだ】
「ほかの宝箱を探して回ってから、また戻ってくれば良いじゃない?」
ずっと待っているだけなんて退屈だわ。
と、その時だった。
突然メミニの足元が光り出し――。
現れたのは30cmくらいの小さな木箱。
【宝箱だ!】
本当に再出現したわね……。




