放課後
――それから、数時間が経過して。
「――いや〜、それにしても不思議だよね〜。昨日話したばかりの男の子と、今こうして一緒に下校してるなんて」
「そうですね、更科さん。僕なんて、未だに夢ではないかと思っています」
「ふふっ、随分と長い夢だね」
放課後、街路樹の並ぶ穏やかな道を更科さんと共に歩いていく。ちなみに、僕らが二人でいるところをなるべく他の生徒に見られないようにするという事情はもちろん下校時も同じで。なので、登校時は校舎のわりと近くまで来た辺りで別れたように、下校時は別々に校舎を出て、そして登校時に別れた辺りで合流するという段取りで。……あっ、ちなみに学校内では二人になれそうなタイミングがあまりないので、基本的に必要以上に関わらないようにというお話になっていて……まあ、言うまでもないかな? ……それにしても、本当に未だに夢みたいで。そして、これが夢なら願わくばずっと――
「――ねえ、遥くん。今から、ちょっと寄り道していかない?」
「……へっ?」
「――いや〜やっぱ最高だよね、これ! でも、食べすぎないように気をつけなきゃね。最近、ちょっと太ってきた気もするし」
「そ、そんな! ……その、更科さんは本当にスタイルもめちゃくちゃ良くて……」
「ふふっ、ありがと。いや〜、直に見た人の言葉には説得力があるねっ」
「……や、やめてください」
それから、10分ほど経て。
何とも悪戯っぽくお話しなさる更科さんに、何ともたどたどしく答える僕。ちなみに、実際に更科さんはスタイルもめちゃくちゃいい。その辺りの明確な基準なんて知らないけれど、それでも全く以て太っていないことは僕でも分かって……うん、改めて思い出すとめっちゃ恥ずかしい。
ともあれ、今いるのはクレープ屋さんに設置されている木組みのベンチ――更科さんはカスタード、僕はチョコのクレープを手にほのぼのと(?)お話をしているわけで。
「――ねえ、遥くん。一口交換しようよ。実は迷ってたんだよね、チョコにしようかどうか」
すると、ふとそう口にする更科さん。確かに、ご注文の際に少し考えていたみたいだけど、なるほどチョコと悩んでたんだね。そして、もちろんお断りする理由はない。……ないの、だけども――
「……それでは、更科さん。この辺りを、お好きなように千切っていただけたらと」
「……いや、なんでそんなところから? 普通に、上からパクリといくつもりだったんだけど」
たどたどしくそう言うと、呆れたように尋ねる更科さん。……まあ、そうなるよね。だって、僕が指差したのはクレープの横の方……あれ、横って言うのかな? ともあれ、指差したのはまだ僕が口をつけていない辺りなわけで。というのも――
「……ですが、更科さん。それは、その、なんと言いますか……いわゆる、間接キスになるのでは……」
「……えっ? まあ、それはそうだけど……でも、そこ気にするの?」
「……いや、だって僕ですよ?」
「……いや、だって僕ですよって……まあ、遥くんのイメージとしては意外じゃない……っていうか、そのままだとも思うけど、でも……流石に、今更じゃない? 流石にもう、間接キスくらいで恥ずかしがる関係じゃないでしょ、あたし達。そもそも、キスにしたって間接どころか直せ……んぐっ」
呆れたように話す更科さんに対し、慌てて彼女の口を手で塞ぐ僕。……いや、まあ事実だし、僕としては誰に聞かれて困るわけでもないのだけども……その、やっぱり口に出されてしまうと、なかなかに恥ずかしいものがありまして。




