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恋の始まりは身体から?  作者: 暦海


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プレゼント

 ――それから、15分ほど経過して。



「……お待たせして申し訳ありません、更科《さらしな》さん」

「ううん、気にしないで。あたしだって同じくらい時間かけてたし、そもそも制限時間以内だし。それに、時間ギリギリまで考えてくれてたってことでしょ? だったら、あたしとしてはそっちの方が嬉しいし」

「……更科さん」



 可愛らしい小さな袋を後ろ手で隠しつつ、お店のすぐ外で待機していた更科さんへと声をかける。彼女の言うように、制限時間のギリギリまで考えてしまっていたのだけれど……うん、ほんと優しいなあ、更科さん。



 さて、改めてだけれも……これがいいかな? それとも、こっちの方がいいかな? などと色々と悩んだ挙げ句、どうにかギリギリで一つに決定。更科さんが喜んでくださるか、本当に不安で仕方がないけれど……それでも、後悔はしていない。色々と悩んだ、とは言ったけれど……実際のところ、これがいいんじゃないか、と最も強く感じるものはあったから。……いや、もちろんとても不安ではあるけども。



「それじゃあ、交換しよっか」

「……はい、更科さん」


 ややあって、せーので手を差し出す僕ら。お互いの手には、色や柄が少し違うものの、同じ大きさであろう小さい袋。きっと似たような大きさのものなのだろう。ともあれ、袋を交換。そして、ドキドキしつつゆっくりと開いて――



「…………へっ?」


 ふと、声がこぼれる。と、いうのも……可愛らしい袋の中には、ピンク色の可愛らしいウサギのキーホルダーが。だけど、それ自体に驚いたわけじゃない。驚いた理由は――



「ふふっ、被っちゃったね」


 すると、おかしそうに微笑む更科さん。そんな彼女の手にもまた、ピンク色の可愛らしいウサギ――即ち、同じキーホルダーが。お値段の制限があったとは言え、あの数多の候補の中から全く同じものを選ぶなんて、なんという偶ぜ――



「……まあ、実はちょっとだけあたしが仕向けたんだけどね。遥《よう》くんが、これを選んでくれるように」

「…………へっ?」


 衝撃の最中《なか》、ふと悪戯っぽい微笑《えみ》でそう口にする更科さん。……仕向けた? でも、そんなのどうやって――



「ねえ遥くん。いくらだった? それ」

「……へっ? 確か、税込みで六百八じゅ……あっ」


 更科さんの問いに、戸惑いつつ答えている途中でハッと気がつく。この可愛いキーホルダーのお値段は、税込みで682円。そして、更科さんが定めていたお値段の制限は700円で――


「……実はね、お店の中を回ってた時から気に入ってたの、このキーホルダー。それで、できれば遥くんとお揃いで持ってたいなあって。それで、もちろん自分で買ってもよかったんだけど……どうせなら、お互いに贈り合いたいなあって思ってあの提案をしたの。


 でもこれ、このお店の中では安い方でしょ? そうなると、遥くんがあたしにこれを贈りたいと思ってくれても、余計な気を遣って他のもっと高いのを選んじゃうかも、って思って。だから、あの値段で制限したの。遥くんが、値段に気兼ねすることなくこれを選んでくれるように。まあ、他のだったとしても、それはそれでもちろん嬉しかったけどね」

「……そう、だったのですね」

「……なんか、思っちゃったんだ。気持ち悪いと思われちゃうかもしれないけど……遥くんと、同じものを身に着けたい。そして、遥くんにもあたしと同じものを身に着けてほしいって」

「……更科さん。いえ、全く以て気持ち悪くなんてありません。そのように思っていただけて、僕は本当に嬉しいです」

「……遥くん」



 更科さんのお言葉に、一気に胸が熱くなる。更科さんがこのキーホルダーを気に入っていた、ということは気づいていた。一緒にお店の中を見て回っていた時、このキーホルダーを見ていた更科さんの目が、他のどれに対してよりも輝いていた気がしたから。……よかった、気のせいじゃなくて。そして……うん、ほんとに嬉しくて仕方がない。



 ほどなく、ご自身の腰の辺り――恐らくはご自宅の鍵へとキーホルダーをつける更科さん。それから僕をじっと見つめ、花のような笑顔で告げた。



「――それじゃ、大事にしてね? 遥くん」





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