あっという間の日々
「――それでは、これでホームルームを終わります。羽目を外しすぎないように、充実したお休みを過ごしてください。三学期、皆さん揃って会えることを楽しみにしています」
それから、一ヶ月ほどが経過して。
壇上からの先生のお言葉に、教室中がバッと盛り上がる。まあ、それもそのはず。なにせ、本日は二学期の終業式――即ち、明日から冬休みを迎えるわけなので。
――それから、数十分ほど経て。
「――いや〜、二学期も終わりかあ。なんか、あっという間だったなあ。期間としては一番長いはずなのに」
「ふふっ、そうですね更科さん。二学期があっという間に感じるのは、体育祭や文化祭など楽しい行事があったからかもしれませんね」
「確かに。それに、来年には修学旅行もあるしね」
冷たい風が頬を撫でる帰り道を、ほのぼのとお話ししながらゆっくりと歩を進めていく。……うん、ほんとにあっという間だった。そして、そう感じる理由は――
「……でも、あっという間だったのは、遥くんと一緒にいる時間が長かったからだよ。遥くんと一緒に過ごす時間が、楽しくてしょうがなかったから」
「……更科さん」
「……だから、これからもずっとあっという間なんだろうなあ。それも、時が経つごとに、いっそうあっという間になっていって……まあ、そうなるとあっという間に卒業だから、そういう意味ではちょっと寂しい気もするけどね」
「……ふふっ、そうですね更科さん」
言葉の通り寂しそうに――それでも、少しおかしそうに微笑み話す更科さん。……うん、確かに。あっという間の時間が続けば、それはもうあっという間に卒業だよね。……でも、それはつまり、それだけ日々が充実していたということで――
「……ねえ、遥くん。今日も、寒くない?」
ふと、僕の顔を覗き込むように尋ねる更科さん。そんな彼女の華奢な手が、さっきまでより心持ち僕の方へ近づいているのは、きっと気のせいじゃないと思う。なので――
「……ふふっ、あったかい」
そっとその手を握ると、嬉しそうに微笑みそう口にする更科さん。そんな彼女が、あまりにも可愛く愛おしくて……どうか、この寒さがずっと続いてほしい、なんて思ってみたり。
「……ところで、改めてだけどごめんね? 冬休み、ほとんどシフトに入れなくて」
「いえ、お気になさらないでください。そのことは、予てから店長もご存知ですし。お店のことはお気になさらず、ご実家でゆっくりお休みになってください」
「……うん、ありがと遥くん」
ややあって、謝意を口にする更科さん。四日後、更科さんはお母さまのご両親――ご祖父母のお家に帰省し、一週間ほどご滞在なさるとのこと。なので、冬休みはほとんどアルバイトのシフトに入れなくて。だけど、もちろん謝る必要なんてない。一週間ほど会えなくなるのは寂しいけど、折角のご帰省――ご両親、ご祖父母と一緒にゆっくりと休んでほしい。……ところで、冬休みの予定と言えば――
「……ところで、更科さん。冬休みに、里中さんが小学生の頃のご友人と会うそうなのですが……なんと、そのご友人は聖香中学の出身だそうです。もしかすると、更科さんもご存知の方かもしれませんね」
そう、少しばかり弾んだ声で口にする。少し前に、里中さんと冬休みの予定についての話になり、その時に彼女が仰っていた内容なのだけど……なんと、冬休みにお会いになるというご友人が、更科さんと同じ聖香中学のご出身とのことで。……まあ、更科さんからすればだからなんだという話かもしれないけども……でも、折角なのでこの驚きの偶然を伝えたいなあと――
「……へぇ、そっか。里中さんとは、そんなプライベートなことまでお話しする仲なんだ〜。ほんとに仲良しだよね〜、里中さんと」
「…………」
瞬間、思考がピタリと止まる。目の前には、すっかりお馴染みの満面の笑顔で僕を見つめる可憐な少女のお姿が。……うん、言わなきゃよかった。心做しか、また寒くなってきた気がするね。
その後、気まずい沈黙のままゆっくりと歩を進めていく。……さて、どうするべきか――
「――ところでさ、遥くん。これから、なにか予定とかある?」
「……へっ?」




